つまり、首長恐竜は巨大な歯で植物を引きちぎった後、細かく噛み砕くことはせずに、そのまま呑み込んでいたと考えられるのです。
この「丸呑みスタイル」は、首長恐竜たちが腸内に共生する微生物を使った発酵で植物を消化していたことを示唆しています。
成長につれて食べる物が変わる
一方で、ディアマンティナサウルスの腸内にあった植物は、意外にも「高木から低木まで様々な高さ」に分布するものばかりでした。
これにより、彼らは低い植物も高い枝葉も幅広く食べていた「バルクフィーダー(大量採食者)」だったと考えられます。
さらに、この個体は成体ではなく「亜成体」とされており、チームは「成長に応じて食性が変化した可能性がある」と推測しています。
幼い竜脚類は、体高が低いため地面に近い植物しか食べられません。
ですが成長とともに首が長くなれば、高木の葉にも手(口)が届くようになります。
こうした「食の成長ステージ」を持つことで、竜脚類は急速な成長を支えながら、変化する環境にも柔軟に適応していったのです。

また今回の研究では、腸内に含まれていた植物が「当時の植生を代表している」ことも重要です。
ディアマンティナサウルスが生きていた時代は、オーストラリアの植物相が針葉樹や種子シダ中心から、被子植物との共存へと移行していた時期にあたります。
彼らはまさにその過渡期を生き抜いていた恐竜だったのです。
これまで想像の域を出なかった竜脚類の食事風景が、約1億年前の“胃の化石”によって初めて具体的に明らかになりました。
彼らは歯で植物を切り取り、ほとんど噛まずに丸呑みし、腸内の発酵タンクでじっくりと消化していたのです。
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参考文献
First reported sauropod fossil stomach contents show the dinosaurs were ‘bulk feeders’ of plants
https://www.abc.net.au/news/science/2025-06-10/sauropod-fossil-stomach-contents-plants-diamantinasaurus-judy/105385422