もし、自分の死ぬ日とその原因を予測するAIがあったら、あなたはその結果を知りたいだろうか。
「デス・クロック(Death Clock)」の開発者、ブレント・フランソン氏(43歳)は、まさにその発明によって、自らの人生を見つめ直すことになった。彼が作ったこのAIプログラムは、ユーザーの身体データや生活習慣を基に、死期と死因を分単位で予測するという、世界で最も不気味なアプリの一つかもしれない。
しかし、フランソン氏を震え上がらせたのは、「死」そのものではなかった。「人生で最も恐れているのは、死ではない。アルツハイマー病だ」と彼は語る。脳が徐々に蝕まれ、認知機能が失われていくこの病気になることこそ、彼にとって想像しうる最悪の恐怖だったのだ。
最悪のシナリオと「警鐘」
ある日、フランソン氏は自らのアプリを試してみた。すると、予測された寿命は76歳。そして、死因の可能性の一つとして挙げられていたのが、彼が何よりも恐れる「アルツハイマー病」だったのである。
「これはまさに、私にとっての『警鐘』だった」と彼は振り返る。この衝撃的な予測は、決して驚くべきことではなかったのかもしれない。彼には認知症になりやすい遺伝的素因があり、加えて生活習慣は最悪だった。
3人の子供の父親として仕事との両立に苦しみ、鎮静剤を常用し、長時間労働と遅い時間の夕食が当たり前。その結果、彼は過去10年間、まともな夜の睡眠をとれていなかったという。質の悪い睡眠が認知症のリスクを高めることは、研究でも指摘されている。まさに、彼の生活そのものが最悪の未来を招き寄せていたのだ。
運命を変えるための「睡眠アスリート」宣言
自らの運命を変えるべく、フランソン氏は大胆な決断を下す。彼は自らを「睡眠アスリート」と名付け、生活の中心に「質の高い睡眠」を据えることにしたのだ。
その取り組みは徹底していた。
・寝室からスマートフォンを追放 ・就寝時間を午後9時半に固定 ・消化時間を確保するため、夕食は午後5時半に済ませる ・寝室に遮光カーテンを設置し、室温を最適な15℃に設定 ・記憶の定着に重要なレム睡眠を妨げるアルコールを断つ
これらは、彼が未来の自分を救うために課した厳しくも合理的なルールだった。
