コスト上昇を抑える仕様に

──認証取得にチャレンジする上で何か困難だったことはありましたか。

ZEBへの対応を考慮するとどうしてもコストが上昇してしまうので、どの部分でコストを抑えた仕様にするかの判断が難しかったですね。阪神電鉄と何度も細かく調整を繰り返したのですが、やはりその部分が一番大変だったと思います。

ZEB認証には4つの種類がありますが、今回、スタジアムについては「ZEB Oriented」、室内練習場・選手寮については「Nearly ZEB」を取得しました。その中でも認証を受けるに際して、「太陽光発電パネルの設置」が一番のポイントになったと思います。かなり大掛かりな設備でしたので、阪神電鉄に導入する決断をしていただいた点は大きかったですね。

──実際に施設を利用する阪神タイガースの選手や公園の利用者からはどんな声が挙がっていますか

プロ野球12球団の中でも、二軍の施設としてはこのスタジアムが最も大きなものになります。ですので、選手からは練習環境が整って嬉しいという声があったと聞いています。

私自身も一利用者として何度か訪れていますが、歩いていると近隣住民の方が井戸端会議をしていて、「何かちょっといい場所ができたね」という声が聞こえてきたのは嬉しかったです。

タイガース練習場では選手を間近に観ることができるので、選手目当ての野球ファンが大勢来ています。その一方で近隣の方が公園内を散歩しています。普段はあまり野球に興味がない方も、公園に来たことをきっかけに野球を身近に感じてもらえたら嬉しいですね。

また公園内にはカーボンニュートラル関するバナーを掲示していたり、分別を意識づけするメッセージを入れたゴミ箱を設置したりしています。環境に少しでも興味を持っていただけると、今回のプロジェクトの意義があるのではないかと思っています。ぜひ多くの方に来ていただきたいと思います。

停電が発生した場合でも数週間自立できるような建物

──脱炭素社会の実現に向けて今後どのような取り組みをしていくのでしょうか。

カーボンニュートラルに関しては、今後は必須の取り組みであると考えています。当社では2030年までにCO2排出量を50%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指しています。これを達成していくための今後の取り組みについて、「カーボンニュートラルチャレンジ」というステートメントにまとめて昨年4月にホームページで公開しました。

単純にCO2排出削減だけでなく、私たちの様々な生活がもっと良くなることを考えています。具体的には、環境に加えて防災の視点を建物の設計に取り入れています。災害から守ってくれるしっかりとした建築を作っていく取り組みをしていきます。

まずは絶対に建物が壊れないことが必須ですが、例えば災害によって停電が発生した場合でも数週間自立できるような建物を作ることを目指しています。これらについては「LCB」(Life Continuity Building)という当社独自の設計基準による建築を続けており、すでに20件以上の実績があります。

エネルギー消費量が少ないZEBは、ライフラインが途絶した場合でも建物機能を低下させない強靭性を持つと考えています。ですので、これからも積極的にZEBを推進していきます。今後は国が掲げている「2030年以降の新築建築物でZEB水準の省エネ性能を確保する」という目標に対応するために、基本的には全ての建物でZEB水準の達成に取り組んでいく予定です。さらに既存建築物の改修案件についても、ZEBに適合したリフォームに取り組んでいきたいと考えています。