研究者たちは今後、甲殻類との関係性や地中の空洞のネットワーク構造を明らかにするため、さらなる調査を進める方針です。

また今回発見された干潟は、震災とその後の護岸工事によって大きく環境が変わった場所でした。

こうした干潟の上部、いわゆる潮間帯と呼ばれる領域は、クダリボウズギスのような希少種をはじめ、多様な生物たちの生息地として知られていますが、同時に人間活動の影響を受けやすい場所でもあります。

一度埋め立てやコンクリート護岸が行われれば、地中に広がる繊細な生態系は二度と元に戻らないかもしれません。

今回の発見は、そうした危機に瀕した自然環境の中に、まだ人知れず生き続ける命があるという重要なメッセージでもあるのです。

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参考文献

干潟の地中から美しい希少魚を「発掘」~地中で子育てする奇妙な生態~
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-06-09-1

元論文

First report of a genus Gymnapogon utilizing subterranean chambers in the upper intertidal zone of an estuary for shelter and reproduction in Shizugawa Bay, Miyagi Prefecture, Japan
https://doi.org/10.3800/pbr.20.107

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部