ニューヨークのペース大学の卒業式に登壇した大手マーケットプレイス『Etsy』のCEO、ジョシュ・シルバーマン氏は、先行きの見えにくい時代を迎える若者たちに、自身の体験をもとにキャリア選択の指針を語った。

「自分が本当に望むことではなく、友人や家族、見知らぬ人、ましてやLinkedInやInstagramで良く見られたいという理由で決断をしてはならない」。スピーチの冒頭、シルバーマン氏はそう語りかけ、「あなた方が納得させるべき唯一の相手は自分自身」であり、「人生において受身のアクターになってはならない」と強調した。

ただし、最初は自分のやりたい仕事が何か、アイデアがなくても構わない。「私にとって出発点を選ぶことは基本的な質問から始まる。『自分は一体何が得意なのか?』」と語り、最初の職を得るまでに経験した紆余曲折を明かした。

大学の入学当初は役者を目指して演劇を学んだが、良い役を得ることができず挫折。その後、医療政策の科目に興味を持ち、得意であることを発見した。最終的には医療政策の学位を取得し、就職を目指して首都ワシントンD.C.に移るも、すぐに仕事は見つからず。ソファーで寝泊まりしながら就職活動を続け、ようやく得たのは「上院議員宛ての郵便に返信する仕事」だった。

「私は医療政策アナリストとして残りの人生を生きていこうとしたのだろうか?そうかもしれないが、私はこれがスタートを切る方法だとわかっていた」。そう話すシルバーマン氏は続けて、「私にとって常に大切なのは、始めることによって始めることだ。自分が好きで、得意なことに情熱を持って取り組むことだ」と語った。

上院議員の事務所では、週の前半40時間を本来の業務に、後半の40時間を“誰もやりたがらない仕事”に自ら手を挙げて取り組んだ。会議にはすべて出席し、部屋の隅から同僚たちの会話に耳を傾ける――そうするうちに「人生の思いがけない扉」が開いた。主席補佐官から、新たに立ち上げるコンサルティング会社に加わるよう声をかけられた。