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労基署は厚生労働省の第一線機関として全国に321署あり、労働基準法違反に対する監督・指導を行っています。ただし、すべての労働問題に対応できるわけではありません。

労基署が対応できる問題・できない問題

労基署が積極的に対応するのは、賃金未払い、違法な長時間労働、解雇予告手当の未払い、労災隠し、最低賃金違反などです。これらについては、タイムカードや給与明細などの証拠があれば、比較的迅速に動いてもらえる可能性があります。

一方で、解雇の有効性についての判断、パワハラ・セクハラ(労働局の別部署が担当)、雇用契約の内容に関する紛争などは、労基署では対応が難しい問題です。

友田勉さん(42歳、仮名)は大手メーカーの営業部課長として20年勤務してきました。妻と2人の子供を抱え、5年前に35年ローンで自宅を購入。ところが突然、上司から「今日で辞めてもらう」と告げられ、ロックアウト解雇されてしまいました。

このような状況では、まず利用できる相談窓口を知ることが重要です。労働基準監督署は賃金未払いなど明確な法令違反には対応しますが、解雇の有効性は判断しません。労働局の総合労働相談コーナーでは、あらゆる労働問題の相談を無料で受け付けており、あっせん制度も利用できます。ただし強制力はありません。

より迅速な解決を望む場合は、労働審判制度が有効です。原則3回以内の期日で解決を図り、約80%が調停で解決しています。複雑な法的問題がある場合は弁護士への相談も選択肢ですが、費用面では法テラスの利用も検討できます。また、個人でも加入できる労働組合を通じた団体交渉という方法もあります。

話し合いによる解決を目指す場合

会社との直接交渉を行う際は、感情的にならず冷静に事実を整理することが大切です。まず解雇理由の明確化を求め、書面でもらうようにしましょう。その上で、退職金の上乗せや再就職支援など、条件交渉の余地を探ることも可能です。