2004年にリトアニアを含むバルト三国がNATOに加盟したことで、地域の防衛体制が強化された。これに伴い、NATOはロシアの脅威に備えて各国に部隊を派遣し、現在のドイツ軍駐留のような防衛策が取られるようになる。
ドイツ軍は過去にも海外派遣を行っている。例えば、92年にはカンボジアの国連カンボジア暫定行政機構(UNTAC)に衛生部隊を派遣し、これがドイツにとって初の本格的な国連平和維持活動(UNPKO)への参加となった。それ以降もボスニア・ヘルツェゴビナの平和安定化部隊 (SFOR)・欧州連合部隊 (EUFOR)、コソボのKFOR、アフガニスタンの国際治安支援部隊 (ISAF)、エチオピア、エリトリア、ソマリア、スーダン、コンゴ民主共和国、レバノンなどの軍事作戦や平和維持活動にも派兵している。
今回のリトアニア駐留は第二次世界大戦後初の長期的な外国駐留となり、欧州の安全保障において重要な転換点となる可能性がある。
ロシアに対抗するドイツ
ドイツはロシアに対して複雑な役割を担ってきた。歴史的に、ドイツはロシアとの経済的な結びつきを強めることで政治的な対立を抑えようと努めてきたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ドイツはロシアを「最大の脅威」と位置づけて、その姿勢を大きく転換した。
3月にはウクライナ支援や軍備拡張を可能にする国防費増額に向け、財政規律を緩和する基本法(憲法)を改正した。トランプ政権がNATO加盟国に求めている国内総生産(GDP)比5%の防衛費目標についても、メルツ氏は支持する考えを表明している。
また、ドイツ政府は声明で、NATOの役割について「NATOはドイツの安全保障の要であり、ドイツに対するいかなる攻撃も抑止する力を持っている」「NATO加盟国は、民主主義、法の支配、人権尊重といった共通の価値観を共有しており、これらの価値観を守るために協力している」「ドイツは、NATOの活動に積極的に参加し、軍事力、資金、人材を提供することで、NATOの強化に貢献していく」などと述べている。