GDP比で250%も財政赤字を増やしても、25年度の実質経済成長率は0.5%、26年度は0.7%(日銀)という有様です。実現できそうにない経済見通しを掲げ、財政再建に取り組むポーズだけはとる。そんな虚勢ははらないでほしいのです。
少子化は韓国、中国でも進み、韓国の出生率は日本より低い0.7ですし、中国は一人っ子政策の結末として人口減に向い、高齢化のスピードは日本より速いそうです。社会が成熟していくと、あれこれ手を打っても少子化は止められない国が増えていく。そんな時代に入っているのですから、政府債務の膨張は避けなければなりません。
政府債務の膨張は世界的な傾向です。債務残高は324兆㌦で、そのうち政府債務は92兆㌦です。各国が経済的な行き詰まりを打開するために、財政を膨張させ、債務(借金)が増えているのです。出回ったカネは最終的にはマネー市場に流れ込み、株高、資産高を演出し、政治家にとっては都合のいい状態となります。株価が不調に陥ると、また財政膨張、金融緩和に駆け込み、債務が増え続けるという循環の繰り返しです。
こうした問題に加え、世界全体として「高コスト、高負担」の時代に入り、三重苦に苦しむことになってきました。ウクライナ戦争にみるように、多くの国は軍拡競争に巻き込まれ、国防費が膨張しています。トランプ米大統領は「自国の防衛は自国が負担せよ。米国に頼るな」と、強調しています。各国が高齢化していけば、社会保障費(年金、医療、介護)が増えていくのは必然です。
脱炭素などの地球環境対策は巨額のコストがかかります。グリーンフレーション(環境対策コスト、物価上昇)という新語も生まれています。理想を追うあまり、政府も社会も費用対効果を軽視する流れに乗っています。トランプ氏に見られるような反グローバリゼーション、製造業の国内回帰は高コスト構造を招く。トランプ氏が仕掛ける相殺関税、追加関税も結局は自国や相手国が負担することになります。