このように官僚のさじ加減で厚生年金から基礎年金に65兆円も積立金を移転する前例ができると、今後も財政悪化のたびに厚生年金が官僚の便利な財布にされ、サラリーマンの負担はどこまで増えるかわからない。
これについては年金部会でも事業者側委員や労働側委員が強く反対し、自民党の厚生労働部会でも批判を浴びて削除された。それを国会の土壇場で立民党が復活させたのだ。しかもその張本人である長妻昭氏は、国民年金加入者が基礎年金の5%しかいないという事実誤認でこれを押し切った。
納付期限は64歳まで支給開始年齢は70歳からに延長すべき超高齢社会に対応して国民年金加入者にも応分の負担を求める45年化は自然な改革であり、財政的にも無理がない。今後は受給開始年齢を70歳に上げるなどの措置を取れば、今の年金法の枠組の中で国民年金の財政問題は解決できる。
立民党は昨年、45年化をぶち壊しておきながら、その代替措置として出てきた年金流用法案を土壇場で持ち出し、衆議院では数日間の審議で可決し、参議院でも13日に可決しようとしている。これは老人に迎合し、取りやすいサラリーマンから搾取する官僚の常套手段である。
このような暴挙をやめ、年金法改正案は今国会では廃案とすべきだ。参院選後の臨時国会で年金法案を再改正し、「附則」に書かれているマクロスライド早期終了の規定を削除するとともに、45年化の規定を復活させればいい。
また制度・規制改革学会も提言しているように、支給開始年齢も70歳に引き上げるべきだ。先進国の支給開始年齢が67歳以上になっている中で、世界最長寿の日本が65歳からというのは異常である。