ヤツガシラのヒナたちのクチバシや爪は、肉を切り裂くようには作られていません。

そのためヤツガシラの兄弟食いは、孵化直後の小さなヒナを親鳥が掴み、年長の大きなヒナの口の中に放り込む形式をとっています。

そこで今回、CSICの研究者たちは、ヤツガシラの兄弟食いが、病気や事故によって死んだ兄弟をエサとして有効利用する偶然に頼ったものか、あるいは卵を産む時期を調節した計画性のあるものかを調べることにしました。

兄弟食いに潜む緻密な計画性を解き明かす

余分な卵はわざと孵化期の最後に産み、小さなヒナが生まれるようにしています
余分な卵はわざと孵化期の最後に産み、小さなヒナが生まれるようにしています / Credit:川勝康弘

ヤツガシラの兄弟食いは計画性のあるものなのか?

答えを得るため研究者たちは産卵前のヤツガシラの巣を2つのグループにわけて、一方のグループのメスに産卵を終えるまで追加のエサ(1日あたり25匹のコオロギ)を与えました。

すると追加のエサを受け取ったメスは平均して1個多く卵を産むものの、卵が多い巣では兄弟食いも多発することが判明します。

観測された兄弟食いは主に、孵化期間の最後に産まれた小さなヒナが犠牲になるパターンでした。

次に研究者たちは、卵が孵化するタイミングを計測し、孵化する1日前の卵を別の巣から移す実験を行いました。

目的は、追加の卵から誕生したヒナの存在が、元から巣にいる小さなヒナの共食いを防ぐかを調べることにあります。

すると追加の卵から産まれたヒナと、元から巣にいた小さなヒナの両方が食べられてしまったことが判明します。

この結果は、年長の大きなヒナがいる巣でうまれた幼いヒナは、全て兄弟食いの対称になってしまうことを示しています。

また兄弟食いの発生率が高い巣では、巣立ちに成功できるヒナ数が平均して2羽近く増えていたことがわかりました。

これらの結果は、産卵前にエサが豊富にある場合、ヤツガシラたちは余った栄養を保存するための方法として、追加の卵を産むという選択をとっていることを示しています。