低価格実現の理由

 低価格を実現できている理由は何か。

「直接的な理由としては、世界市場に広く展開しているため生産量が圧倒的に多いという点があげられます。また、ハイアールの『AQUA』にせよ、東芝の白物家電事業を買収した美的集団(マイディアグループ)にせよ、グループで各製品のベースモデルを持っており、それをマイナーチェンジするというかたちで低コストでつくることができています。

 静音性やコンパクトさなど細かい点のクオリティを追求するには、やはり独自に設計する必要があると日本メーカーは言いますが、逆にいうと、細かい点にこだわらなければ、中国製品は性能や品質で大きく劣るわけではないので、そっちのほうを選んでも問題ないわけです。実質賃金の低下で日本人の家計がどんどん苦しくなり、『洗濯機に高い性能は必要ないよね』『ニトリやアイリスオーヤマの低価格PB商品で十分』という消費者が増えた今、その延長線上で中国製品が売れるのは当然でしょう」(安蔵氏)

先進的な機能を積極的に搭載していく姿勢

 では、中国家電の躍進で日本メーカーが苦境に追い込まれるという展開は考えられるのか。

「中国メーカーとしては、低価格の商品だけしか売れないという状況にはしたくないわけで、一方、日本のメーカーは、低価格商品は中国メーカーに任せて自分たちは高価格商品を売っていきたいと考えています。ですので日本メーカーは『日本人の機微をよくわかってるよね』みたいな『痒いところに手が届く』ものづくりを続けるしかないと思います。その点でも中国メーカーが日本メーカーと同じレベルになってくると、日本メーカーは太刀打ちできなくなるかもしれません。中国製のロボット掃除機も世界で売れていますが、米アイロボットの製品よりも先進的な機能をどんどん搭載しており、新しい技術を先んじで取り入れるというのは中国メーカーの強みです。日本メーカーも高級モデルでそのような方向にいけないと、なかなか厳しくなっていくのではないでしょうか。

 中国メーカーはまずは低価格製品から攻勢をかけて、徐々に高価格帯にも広げていくでしょう。エアコンのような設備的な製品は海外メーカーが入り込みにくい分野ではありますが、すでに中国メーカーのドラム式洗濯機や冷蔵庫は日本でも売れているので、徐々に日本の家電市場全体でシェアを拡大していくという流れになるのではないでしょうか」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=安蔵靖志/家電ジャーナリスト)