●この記事のポイント ・ハイアールやハイセンスなど中国製の家電製品、家電量販店で徐々に売り場が拡大 ・カタログ性能はほとんど差がないにもかかわらず、日本製品の半値近くで売られているケースも ・専門家は「中国製品は性能や品質の面で日本製と比べて遜色ない」と評価

 ハイアールやハイセンスなど中国製の家電製品が売れている。家電量販店では徐々に売り場が拡大され目立つようになり、日本製品の売り場を侵食しつつある。ひときわ客の目を引くのが、その安さだ。カタログ性能はほとんど差がないにもかかわらず、日本製品の半値近くで売られているケースもある。かつて中国家電といえば「安かろう、悪かろう」というイメージが強かったが、家電量販店関係者は「ハイアールやハイセンスなどの大手の製品に関していえば、日本製と比べて遜色ない」と言い切る。そうなれば、気になるのが中国製品のシェア拡大によって、日本メーカーが打撃を受けてしまうのではないかという点だ。かつて日本製テレビは世界市場で大きな存在感を示していたが、低価格を武器に躍進した韓国・中国勢に押されるかたちで衰退。すでに東芝、三菱電機、日立製作所は生産から撤退または事実上の撤退。パナソニックも撤退を検討していると伝えられている。「日本の家電」も国内市場で同じ道をたどるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

日本の消費者の認識が変化

 大型家電では現在世界シェア1位のハイアールは、2002年に三洋電機(当時)と三洋ハイアールを設立して日本市場に参入。昨年には日本市場で販売体制を強化していくと発表。ハイセンスは2018年に東芝のテレビ事業を買収し、現在は傘下のTVSレグザを通じて「レグザ」ブランドを展開。白物家電も商品ラインナップを拡充している。

 なぜ今、中国メーカーが日本で攻勢をかけているのか。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏はいう。

「日本の消費者が中国製品に対して抱くイメージは、かなり上がってきています。かつては『安かろう悪かろう』というイメージがありましたが、それもなくなりつつあります。アマゾンなどで名前を聞いたことがないような中国メーカーの低価格の製品を買ってみて『意外に使える』と感じた消費者が増えて、中国製品の購入へのハードルが低くなったというのが、要因の一つでしょう。ジェネリック家電やアイリスオーヤマ、ニトリなどのPB(プライベートブランド)家電が増え、低価格家電への抵抗感が薄まり、日本製であっても製造は中国メーカーに委託するケースが当たり前になっているという事実を消費者が認識して、『中国メーカーもきちんと品質の良い製品をつくる技術力がある』という理解が広まったことも大きいでしょう。このほか、アマゾンの場合は基本的には返品が可能なので、中国製品でも安心して購入できるという点も影響していると思われます。

 消費者の認識という点では、もはや『日本製だから安心』『日本製は世界ナンバーワン』というイメージは薄れつつあります。カスタマーサポートの拠点も減っていますし、その点で中国と日本のメーカーに差はなくなりつつあります。加えて、ハイセンスのレグザがサッカーワールドカップの公式スポンサーになったり、TCLがオリンピックのワールドワイド・オリンピック/パラリンピック・オフィシャル・パートナーになったりして、中国メーカー各社が世界で大々的にPR活動を展開している点も影響しているでしょう。

 以上のように日本市場が新たなフェーズに入ったことを受けて、中国メーカーが攻勢をかけてきているのだと考えられます」