日銀の使命は物価安定であり、インフレ目標を実現することではない。政府が「物価高対策」と称して(無意味な)財政バラマキをやるより、まず利上げで物価を下げるべきだ。もし将来、物価が下がりすぎたら利下げすればいいのだ。

減税で「好循環」は起こらない

今のようにインフレと財政不安が高まっているとき、財政赤字を増やすのは禁じ手である。消費税を5%も減税したら、インフレが加速するばかりでなく、赤字国債が毎年13兆円も増える。超長期金利はさらに上昇し、財政危機が深刻化するだろう。

玉木氏のいう「消費税率を下げたら消費が増え、景気がよくなって消費税収が増える好循環」というのは、なつかしいラッファーカーブだが、これは日本では成り立たない。

ラッファーカーブ

消費税率が最適税率Tより高い場合には税率を下げると消費が増え、税収が増えるが、日本の消費税率10%はTよりはるかに低い。コロナのとき行われた欧州のVAT減税でも税収は大幅に減った。欧州の20%でも税率はT*より低く、減税で税収は減るのだ。

玉木氏の好きな「高圧経済」の景気のいい話は、選挙の街頭演説には向いているが、トランプ政権を見てもわかるように、無謀な大減税はアメリカ経済を危機にさらしている。

雇用改革とともに年金改革が必要だ

中長期の政策として名目賃金を上げるために必要なのは、雇用を流動化する雇用改革である。人手不足でも賃金が上がらない最大の原因は、正社員の雇用保護が強すぎることだ。採用したら40年以上も解雇できない正社員は、人的投資としてリスクが高すぎる。

これを解決するために解雇の金銭解決ルールを25年前から経済学者が提案してきたが、連合が強硬に反対して一歩も進まない。

雇用を流動化するとき必要なのは、労働者の最低所得保障だが、いま国会に出ている年金流用法案は、最低保障にならない国民年金を延命するものだ。このような年金制度を変え、税(1階)で最低所得を保障するとともに、年金(2階)は段階的に民営化する抜本改革が必要である。