日本経済の大きな問題は、賃金が上がらないことだ。特に最近はインフレで実質賃金が下がっており、政府は「新しい資本主義実現会議」で実質賃金の1%上昇をめざす「賃金向上推進5カ年計画」を決めた。

しかし具体的な政策としてあがっているのは「中小企業支援」などの財政バラマキばかりで、賃金が上がる道筋は見えない。政府が賃上げできるのは、公務員だけである。民間企業の賃上げを政府が代わりにやることはできないのだ。

まず日銀が利上げでインフレを止めよ

他方、国民民主党は「実質賃金を増やすために減税が必要だ」という手前味噌のキャンペーンを張っているが、そのロジックがよくわからない。

玉木氏の描いている図は、経済学的にはナンセンスである。賃上げを手取り増に結びつける「鎖が切れている」原因がインフレ増税なら、今やるべきなのはインフレを止めることだ。その政策手段として普通考えられるのは、日銀の政策金利引き上げである。

ところが日銀が利上げしないため、総合CPIは3.6%と主要国で最高になり、食料品は8%を超える高いインフレ率が続いている。これは(植田総裁がよく言及する)予想インフレ率(BEI)が1.58%と、まだ2%に届かないためだろうが、本末転倒である。