OBBBAの争点は、経済成長を維持したまま、財政赤字を改善する方法はあるのか、という点に尽きる。
そして、現在のアメリカ政治は、トランプ大統領の支持者とその批判者の対立をめぐって展開していることにも、注意が必要だ。
OBBBAが成功すれば、トランプ政権の支持率は上昇し、トランプ系の政権が続いていく見込みが高まってくる。失敗すれば、大混乱だ。各論で議論をふっかけている諸勢力も、大局的な見取り図にそった対案を持っているわけではない。そもそも現状の危機的な財政赤字の状況を見れば、そんな画期的な解決策などあるはずがない。アメリカの政治は、さらにいっそう混沌としたものになっていくだろう。
率直に言って、OBBBAが成功するかどうか、私には、わからない。懐疑的な経済学者も多いと思われるが、それらの経済学者が特効薬的な代替案を持っているわけでもない。
ただし、失敗に終わったとき、アメリカがトランプ大統領以外の指導者を据えて、別の方法で諸問題を解決して進んでいく見込みがあるわけでもない。トランプ大統領の政策にリスクがあるが、別の指導者になればリスクがなくなるわけでもない。
状況が厳しく、切迫しているのである。SNS上の喧嘩だけに注意を奪われている場合ではない。最悪のシナリオも可能性として視野に入れつつ、注意深く事態の進展を見守っていく必要がある。
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