より直近で、最も本質的な問題は、連邦政府債務上限額の問題だ。現在のアメリカ連邦政府の法定債務上限は、36.1兆ドルである。これは、2023年6月に成立した「財政責任法(Fiscal Responsibility Act of 2023)」により、2025年1月1日まで債務上限が一時的に停止された後、累積された債務に基づいて再設定されたものである。これに対して、2025年3月時点で、アメリカの連邦債務総額は、約36.56兆ドルに達したという。
現在の債務上限のままでは、2025年8月頃に政府の資金が枯渇する、と財務省は警告している。債務上限を引き上げなければ、連邦政府の活動が停止するだけでなく、債務不履行に陥る可能性がある。そこで、7月中旬までに議会が債務上限の引き上げまたは再度の停止措置を講じなければならない状況にある。
仮にOBBBAが経済成長を促進して税収も増やすというトランプ大統領のバラ色の青写真が実現する場合でも、それが7月までに実現することはない。OBBBAは、最も楽観的な見通しの場合でも、当面は債務上限の引き上げでしのぐことが大前提になる。
現在議論されている債務上限の引き上げ幅は、4兆ドルだ、これにより、債務上限は最大で40.1兆ドルに達する可能性が生まれることになる。大きな山になるだろう。
20世紀アメリカの対立図式では、民主党が労働寄りの政策を主張し、共和党は富裕層寄りの主張をすることになっていた。だがトランプ政権は、白人労働者階級を一つの強力な支持基盤としており、実際に、OBBBAにもチップの非課税化などの労働者向けの施策が盛り込まれている。現実に、民主党の支持基盤が北部州の高所得者層であり、共和党が南部の低所得者層を支持基盤にしている構図は、トランプ政権でいっそう劇的に鮮明になっている。OBBBAをめぐる対立図式に、20世紀の左右のイデオロギー対立をあてはめすぎると、的外れになるだろう。