とはいえ、人が落下した際の速度は、無限に加速し続けるわけではありません。

非常に高いところから落下する物体は、終端速度と呼ばれる速度に達します。

終端速度とは、物体が自由落下する際、重力と空気抵抗の力が均衡する速度のことを指します。

この速度に達すると、物体はこれ以上速く落ちることがありません。

つまり、1000メートルから落下した人でも1万メートルから落下した人でも、終端速度に達していれば、地面に激突する際の速度は同じになる可能性があるのです。

そのため専門家の説明では18メートル以上の高さからの落下は危険という話しがでましたが、より高いところから落ちたほうがより危険となるのは、数十メートルの高さから落ちた場合に限ります。

さきほど紹介した3つの事故では、約1500メートル以上の高さから落下した人と、約1万メートルの高さから落下した人がいましたが、1000メートルを超える高さから落ちた場合、これほど落下高度に違いがあったとしても危険度はほぼ一緒ということになるのです。

またこの落下速度は、衣服の形や体の姿勢、風の向きや強さなど様々な条件によって減少します。

生身の人間が、完全に無防備な状態で地面に垂直に落下した場合、最高で時速200キロから240キロ程度になる可能性がありますが、パラシュートを使用した場合は時速16キロ程度までさがります。

パラシュートを使用したときほど速度が低下しなかったとしても、どんな格好をしていたか? どんな姿勢になっていたかで、どれほど高い場所から落ちたとしても落下速度はそれなりに低下する可能性があるのです。

高所からの落下で助かった人たちは、この点で幸運だった可能性があります。

先ほど紹介した事故でも、2021年に上空約4100メートルから落下して生還した女性は、補助パラシュートが足に絡まって落下したとされていますが、補助パラシュートなどが中途半端に開いた状態が、落下速度をいくらか緩和していた可能性があります。

地面の状況が最も重要