「当方氏はよほど暇なのだろう」と思われる読者がいるかもしれない。「コラムのテーマがないので意味のないこじ付けをして書いているだけだろう」と同情される読者もいるかもしれない。そうではないのだ。スイスの精神科医カール・グスタフ・ユング(1875年~1961年)のシンクロニシティを思い出してほしい。私たちの周囲には「意味のある偶然の一致=シンクロニシティ」が溢れているという現実があるのだ。

カール・グスタフ・ユング Wikipediaより
テスラの株急落による減少額「22兆円」も福島第一原発の株主42人の損害要求額「22兆円」も共に「株」が絡まっていることに気が付く。偶然にも、「22兆円」は実体経済の世界ではない。「22兆円」は株の急落でもたらされた結果の数字だ。明日になれば、株が上昇するかもしれない。「22兆円」の偶然にも意味があるはずだ。
当方の人生でも「意味ある偶然」を少なからず体験してきた。例を挙げてみる。当方がウィーンの外国人記者クラブに登録しに行った日だ。当方が記者証を提示すると、同クラブの事務員が「あれ、全く同じ名前の日本人記者がクラブに登録直後,急死したばかりだったので・・」と言って当方の顔を驚いた表情で見ていた。亡くなった日本人記者は著名な日本の大手新聞社の記者でワシントンから冷戦をフォローするためにウィーンに派遣されたばかりだったことを後で知った。同記者の急死は日本のメディアでも報じられた。その記事を読んだ当方の知人から電話がかかってきた。「君が亡くなったと思って心配になったのだ」というのだ。
もう一つ「意味ある偶然」の話を紹介する。妻の誕生日に息子夫婦からプレゼントの花が届くよ、と連絡があった。その直後、配達人が花束を運んできた。最初は妻の花かなと思っていたが、誕生日カードには隣人の女性の名前が書かれていた。なんと隣人の女性と妻は偶然にも同じ生年月日だったのだ。ウィーン市長から市民には誕生日のお祝いカードが届くのが通例となっている。今年も妻に届いたが、隣人の女性にも同じ日に郵便ポストにカードが入っていただろう。