アメリカの脊椎外科医であり熟練のカヤック愛好家でもあるメアリー・ニール医師は、チリの激流で思わぬ事故に見舞われ、30分近く水中に閉じ込められた。絶望的な状況の中で彼女が体験したのは、「死後の世界」と呼ぶにふさわしい、強烈で鮮明な“もう一つの現実”だったという。
静かに訪れた“死”と、見えない腕の感触
事故当時、ニール医師のカヤックは激流にのまれ滝を落下。深さ2.5〜3メートルの水中に押し込まれた彼女は、身動き一つ取れなかった。だが、死の恐怖の中で感じたのは意外にも「安らぎ」だった。助けを乞う代わりに神の意志を受け入れる祈りを捧げたその瞬間、彼女の身体は温かく力強い“腕”に包まれる感覚に満たされたという。
その腕の主は「イエス・キリスト」だったとニール医師は語る。自身の価値を疑う気持ちに苛まれながらも、その“抱擁”は人生で最も美しく、真実味に満ちた瞬間だったと彼女は回想する。
光に包まれた空間と、愛に満ちた存在たち
やがて彼女は、まばゆい光に満ちた空間へと“引き上げられる”。そこでは、光をまとった存在たちが彼女を出迎えた。それは亡くなった家族や縁者ではなく、「魂のレベルで深く結ばれた存在たち」だったという。
この場所には生と死の境はなく、むしろ“より鮮明な現実”として存在していた。さらに彼女は、人生のあらゆる場面を多角的に体験する「人生の再体験」に導かれる。ただ映像として過去を見るのではなく、関わった人々の感情や思考までを“共有”するような体験だったという。
舞台となったのは、オーロラのように色彩が変化する幻想的な世界。巨大なドームのような構造物があり、それは愛の繊維で織り上げられていた。無数の魂が彼女の到着を喜び、光と祝福で満ちあふれていた。

「まだその時ではない」──地上への帰還
しかしその最中、ガイドと思しき存在から「まだその時ではない」というメッセージが告げられる。そして突然、現実世界へと引き戻された彼女は、仲間によって救出され息を吹き返した。
彼女はこの体験を経て、死に対する恐怖を克服し、人生に対するまなざしを根底から変えたという。