レンタルビデオのスキームで低価格を実現
このサービスが支持されている主な理由は、7泊8日でわずか980円(税込)という圧倒的な低価格にある。他社もPS5のレンタルサービスを提供しているものの、ゲオは1日あたりの料金が低く、さらに最低レンタル期間も短いという特長がある。
「ゲオでは旧作DVDを110円(税込)という低価格で提供しているため、価格が4桁になるとレンタルのハードルが高くなると考え、980円(税込)に設定しました。
低価格での提供を実現できたのは、実店舗で培ってきたノウハウがあったからです。貸出・返却システムはレンタルビデオの仕組みを活用でき、PS5の取り扱いに必要な本体確認とメンテナンスには、ゲーム買取の経験を活かしています。既存のシステムを利用することで、人件費やスタッフ育成などの追加コストを抑え、店舗へのサービス導入もスムーズに進めることができました」
PS5には無料でプレイできるゲームもあるものの、専用ソフトが必要なタイトルも多い。他社のレンタルサービスでは、ゲームソフトを通販や家電量販店で別途購入する必要があるが、ゲオはソフト販売も手がけているため、その利益を料金設定に還元できている。
ロードサイド店以外への展開も視野に
PS5本体のレンタルサービスは、PS5の販売元であるソニー・インタラクティブエンタテインメントの許可を得て実施された。ユーザーに試しにプレイしてもらうことで、購入をためらうユーザーにもPS5の魅力を実感してもらえるというメリットが評価され、サービスの実現に至った。
「『原神』はスマートフォンなどPS5以外でもプレイできますが、PS5でプレイすると、スマホと比べて表現がより精細で、没入感が格段に違うんですよね。私自身、PS5でアクションRPG『エルデンリング』をプレイしたときは、本当に圧倒されました。迫力があり、映像も美しく、まるで映画だなと。PS5は本体価格から入手のハードルは高いですが、レンタルで実際に体験していただければ、その価値を実感していただけるゲーム機だと確信しています」
PS5は本体が大きく重いため持ち運びが困難であることから、現在は車でのアクセスが便利なロードサイド店舗を中心にサービスを提供している。今後の展開について塚本さんは語る。
「サービス開始前は、貸出・返却の際に店舗への来店が必要なため、時間効率を重視する現代において、お客様がわざわざ足を運んでくださるのか心配でした。しかし、予想以上の好評をいただき、私を含めチーム全体は安堵しているところです。サービス開始から3カ月が経ち、手応えを感じており、今後はロードサイド以外の店舗への展開も検討しています」
レンタルビデオで培ったノウハウを活かしたPS5のレンタル事業は、消費者のニーズに見事に応えている。物価高騰によりシェアリングエコノミーへの注目が高まるなか、レンタル事業で業界を牽引してきた実績をもつゲオの今後の展開から目が離せない。
(文=福永太郎/編集者・ライター)