この数字は、以前に観察された「ゴミ箱のフタ開け行動(=ゴミ箱を開けて、中の食料を漁る行動)」とほぼ同じ成功率で、キバタンの高度な学習能力と行動の洗練を示しています。

また、朝と夕方に活動が集中することや、雨の日には試行回数が減ることなど、行動パターンにも明確な法則性が見られました。

「水飲み技術」が文化として広がる

この水飲み行動の興味深い点は、単なる「賢い個体の特技」にとどまらず、地域全体に広がる“文化”のように根付いていたことです。

研究では、同じ水飲み場に列を作るキバタンたちの姿も確認され、1羽が水を飲んでいる間は他の個体が順番を待つ様子も映像に収められています。

キバタンたちは、それぞれに少しずつ異なる動作パターン(片足操作か両足操作かなど)を持ちながらも、共通の目的を達成するために動作を調整していたのです。

また、成功した操作パターンは構造的に似ており、失敗した動作よりも規則性や一貫性が高いことも判明しました。

これは、それぞれの個体が試行錯誤を通じて効率的な操作法を学び、それを維持していることを示唆しています。

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水を飲むキバタンたちと調査された場所/ Credit: Barbara C. Klump et al., Biology Letters(2025)

さらに重要なのは、この行動には性差が見られなかった点です。

以前のゴミ箱開け行動では、体力のあるオスが主に行っていたのに対し、水飲み場の操作はオスもメスも平等に実施していました。

ただし、この水飲み文化は今のところ、シドニーの観察された1つの地域に限定されています。

他地域に広がらない理由としては、水飲み場の設計が自治体ごとに異なることが大きいと考えられています。

別の地域では、ボタン式のものや水平の皿型であり、現在のキバタンのスキルでは対応できない可能性があるのです。

今回の研究は、都市化がもたらす新しい生態系の中で、動物たちがいかに柔軟に、そして創造的に適応しているかを示す好例となりました。