不動産投資の中でも区分所有マンションはビギナー向けといわれるがデメリット(リスク)もある。また、単身者/カップル向けなどタイプが違えば経営のポイントは変わってくる。今後の市場環境も交えながら「区分所有は投資価値があるのか」を考えていきたい。

「区分所有」の意味 マンションの1部屋を購入すること、投資では1Kの意味も

「区分」とは、マンションなどの1部屋を指す。「不動産投資で区分所有をする」というときは、1部屋を購入・運用するという意味だ。部屋のタイプは、単身者(シングル)・カップル・ファミリー向けなどさまざまだが、不動産投資の解説では「区分所有=ワンルーム・1K」というニュアンスで使われることも多い。

たとえば、不動産投資の総合情報サイト「楽待」で「区分所有/ワンルーム・1K」の条件で検索してみると該当物件が1万6,000件以上ヒットするのに対し、他の間取りの検索件数は下記のように少ない。

  • 2DK:744件
  • 2LDK:1,424件
  • 3DK:511件
  • 3LDK:1,652件

    ※2019年9月19日時点の検索状況

    まずは、区分所有の主流はワンルーム・1Kということを覚えておこう。

区分所有の3タイプのそれぞれの特徴 単身者、カップル、ファミリー

区分所有マンションの主流は単身者向けのワンルーム・1Kだが、 夫婦・カップル向け(1LDK~2DK /2LDKなど)、ファミリー向け(3DK/3LDK以上) もある。それぞれのタイプで特徴が変わってくる。

タイプ1,「単身者向けの区分所有マンション」の特徴

ローコストな住宅設備が採用されている物件がほとんどなので運用(交換)コストを抑えやすい。単身者向けは以下のように細分化され、それぞれニーズが異なる。

「学生向け」は賃料の安さ、「独身の社会人向け」は駅近と充実した住宅設備、「高齢者向け」はバリアフリー仕様やスーパーの近さなどを重視する傾向がある。

タイプ2, 「夫婦・カップル向けの区分所有マンション」の特徴

単身者向けとファミリー向けの間のポジション。ハイグレードな住宅設備で高めの賃料設定、リーズナブルな住宅設備で安めの賃料設定、どちらの方向性も考えられる。

共働きであることを前提に考えると、駅近の条件はマストだろう。合わせて急行の停車駅、主要駅にアクセスしやすい路線などの条件がプラス材料になる。

タイプ3,「ファミリー向けの区分所有マンション」の特徴

単身者向けよりも賃料を高く設定しやすい。反面、エアコンが複数台あったり、システムキッチンが採用されていたりするので運用コストがかかりやすい。

人気の学区、注目のショッピングモールの近くなど、魅力のあるファミリー向け物件は、有利な賃料設定も期待できる。逆にいうと、駅から離れた特徴のないエリアだと苦戦することになることが多い。

区分所有の3つのメリット:手間がかからない、物件価格が安い、マーケットが大きい

ここから先は、区分所有マンションと他の不動産投資カテゴリ(戸建て住宅、アパート経営、一棟マンション)のメリット、デメリットを挙げていきたい。

区分所有のメリット1:管理の手間がかからない

区分所有のメリットのひとつは、管理の手間がかからないことだ。

他のカテゴリでは、外壁の塗装、植栽の手入れ、共用設備の管理・交換など多くの管理業務が発生する。これらの業務を管理会社に委託するとしても、オーナーとして内容をチェックしたり、追加費用を払ったりする負担が発生する。

これに比べて、区分所有(ワンルーム・1K)の場合は、室内にある住宅設備の交換くらいで済む。そのため、管理に時間を割けない会社員と区分所有は相性がよいといわれる。

区分所有のメリット2:物件価格が安い

初めて不動産投資をする人にとっては、物件の安さは大きなメリットだろう。2018年に首都圏で発売された投資用マンションの平均価格は 3,047万円である(不動産経済研究所調べ)。中古の区分所有になれば1,000~2,000万円台、築年数によっては1,000万円以下の物件もある。

この物件価格の2割程度の頭金(頭金なしの「フルローン」や頭金が1割程度の場合もある)と諸経費のみで不動産投資をスタートできる。

区分所有のメリット3:マーケットが大きい

首都圏だけでも1年間に新築の投資用マンションが4,000~9,000戸(部屋)供給されている。これは新築だけの数なので、中古も含めれば数十倍のマーケットが存在するだろう。

マーケットが大きいということは、それだけプレイヤー(投資家)が多いということだ。不動産投資のデメリットとして、「売却に時間がかかる」「現金化しにくい」ということがよく挙げられるが区分所有の場合、比較的スムーズに処分しやすい。

区分所有の3大デメリット:イールドギャップが低い、融資がつきにくい、経営効率が悪い

そではデメリットはどのようなことがあるのだろうか?

区分所有のデメリット1:イールドギャップが低い

不動産投資の重要な指標にイールドギャップがある。これは、(不動産業界においては)投資物件の利回りとローンの利率の差のことである。当然ながら、この差が大きくなるほどリターンが生まれやすい。

たとえば、同じローン金利2%で借り入れをしていても、利回り5%の投資物件よりも利回り8%の投資物件の方がリターンは大きくなる。

区分所有の投資物件は低利回りのことが多いため、このイールドキャップを出しにくいといわれる。新築マンションではイールドキャップがマイナスなこともある。

区分所有のデメリット2:融資がつきにくい

一般的に、区分所有は戸建て住宅や一棟物件よりも融資がつきにくいといわれる。一棟物件では1人のオーナーが敷地を所有するが、区分所有では戸数分のオーナーが敷地を共有しており、土地の所有割合が低い分、担保がつきにくく融資で不利になりやすいのだ。

そのため、区分所有のローン審査では申込者の信用力(勤務先・勤続年数・他のローンの有無など)が重視される。

区分所有のデメリット3:(一棟物件と比べると)経営効率が悪い

不動産投資の物件購入までにオーナーがやるべきタスクは次の通りである。

  • 投資物件をリサーチする
  • 買い付けを入れる
  • 契約をする
  • 金融機関にローン申し込みをする など

    この手間は一棟物件も区分所有も大きく変わるわけではない。そのため、1契約で1部屋を抑える区分所有よりも、1契約で複数の部屋を抑える一棟物件の方が経営効率がよいという考え方もできる。

「単身者向けは空室リスクが少ない」という説は本当か?

 このようなメリット・デメリットを持つ区分所有の中でも、空室リスクが少ないのは大都市の単身者向け(ワンルーム・1K)という意見は多い。

根拠としては、「日本は人口減少社会だが、単身者世帯は増える。ゆえにワンルームは賃貸ニーズがあり、空室になりにくい」といった内容だが、これは事実なのだろうか?東京都政策企画局「2060年までの東京の人口推計」から世帯数の推移をみてみよう。
 

単独世帯数の推移 単独世帯数(65歳未満)
の推移
単独世帯数(65歳以上)
の推移
2015年 316万人 237万人 79万人
2020年 331万人(+15万人) 245万人(+8万人) 86万人(+7万人)
2025年 339万人(+8万人) 250万人(+5万人) 90万人(+4万人)
2030年 343万人(+4万人) 248万人(−2万人) 95万人(+5万人)
2035年 346万人(+3万人) 243万人(−5万人) 103万人(+8万人)
2040年 339万人(−7万人) 229万人(−14万人) 110万人(+7万人)

東京都内の人口推計で見ていくと、たしかに2035年頃まで単独世帯(単身者世帯)の人数は伸びていくようだ。しかし、その詳細を見てみると、65歳未満の単独世帯は2025年の250万人をピークに減少していく。一方、65歳以上の単独世帯は増加していく予想となっている。

つまり多くの場合、大都市の単身者が増えるという中身は、一人暮らしの高齢者が増えるということなのだ。入居者のターゲットを若者に限定すれば、市場は横ばいから縮小なので必ずしも有利とはいえない。高齢者も含めて考えるなら、市場は拡大するので追い風といえる。

区分所有でマンション投資をする際の注意点

中古物件を含めると膨大な数の投資用マンションが存在するが、リターンをしっかりとれる物件はこのうちの一部である。不動産投資のリスクや安定経営のための知識を十分身につけてからスタートすることが何より大切だ。

ただ、本・ネット・セミナーを通して得られる情報は業者のポジショントークも多いため、対局の意見を聞いて(一例:新築VS中古、区分VS一棟など)バランスよく知識を吸収するべきだろう。その上で、どのカテゴリーが自身には合うかを選択するのが賢明だ。

文・本間貴志(不動産・税務ライター)
 

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