ではチームは実際に「世界最小のヴァイオリン」をどのように作ったのでしょうか?
世界最小のヴァイオリンはどうやって作られるのか?
彼らが使用した技術は「NanoFrazor(ナノフレイザー)」というナノスケールの彫刻装置です。
まず、ゲル状のレジスト(感光性材料)を2層にわたって小さなチップに塗布します。
次にチップをナノフレイザーに設置し、加熱された先端で上層にバイオリンの模様を刻み込みます。
その後、露出された下層を溶かしてヴァイオリン型の空洞を作り、そこに薄い白金(プラチナ)の膜を蒸着。
最後にアセトンで残りの材料を洗い流すと、完成したヴァイオリンが姿を現します。

こうして完成したヴァイオリンは全長35マイクロメートル、幅13マイクロメートルという極小サイズでした。
1マイクロメートルは1メートルの100万分の1であり、私たちの髪の毛の直径はおよそ17~180マイクロメートル、クマムシは50〜1200マイクロメートルの大きさです。
最終的な作品は、チップの上にある微小な“塵”程度の大きさで、電子顕微鏡なしにはその全貌を確認することすらできません。

今回の技術は単なる遊び心では終わりません。
この最先端技術は将来的に、次世代の情報技術やエネルギー技術を根本から支える鍵となる可能性があります。
この技術の最大の特長は、ナノメートル単位で素材や構造を精密に設計・配置できることです。
これにより、従来の電子機器では難しかったような、極めて微小なスケールでの物質の性質制御や機能統合が可能になります。
たとえば、ある特定の波長の光だけを吸収して熱に変えるナノ粒子を、磁性材料や電気材料と組み合わせて配置することで、熱を活用した新しい計算デバイスや記憶装置の開発が現実になります。