●この記事のポイント ・大東建託は営業担当者の教育と支援を行うロールプレイング・システム「生成型AI課長」を導入 ・顧客の特徴に合わせた実践的な応対スキルを学べる ・営業担当者の発言に対する顧客の感情変化を可視化することで、営業スキルの客観的な把握と改善を促す

 不動産大手の大東建託は4月、営業担当者の教育と支援を行うロールプレイング・システムの第2弾となる「生成型AI課長」を導入した。「AI課長」構想は2023年に検討が開始され、24年6月より本格的な開発に着手し、10月に第一弾となる「台本型AI課長」が全国展開。そして今回、営業現場の実態に即した「生成型AI課長」が導入された。顧客の特徴に合わせた実践的な応対スキルを学べるもので、従来の「台本型」から進化し、発言内容・音声のAI解析によって営業職の対応力を多角的に評価・指導するシステムだ。働き方改革で時間に限りがあるなかで、AIを活用して省力化しながらもお客様対応の質を向上させ、生産性の向上を目指している。今回は同社に、効果や背後にある課題、そして今後のAI活用について詳しく話を聞いた。

●目次

台本型から生成型AIにアップグレードし、AIが顧客役と評価者役を代替

――大東建託の営業支援ロールプレイング・システム「生成型AI課長」はどんなシステムでしょうか。

DX推進部・芦野直樹次長 昨年10月に「台本型AI課長」をリリースしており、ロールプレイングの第2弾です。シナリオベースで弊社営業担当に対して会話スキルを磨く形ではなく、今回は営業担当がお客様と会話をしていく中で、担当者の発言や音声をAIが評価して返答、そのやり取りを通じて「お客様がどう感じたのか」「こういうアプローチをしたほうがいいのではないか」というアドバイスを「生成型AI課長」からもらう仕組みになっています。

 AI が生成したお客様との対話で、営業担当の発言がお客様の気持ちに寄り添えているか、必要な情報をヒアリングできているかなど、営業に必要な要素をそれぞれ定量化した評価でフィードバックし、営業担当の対応スキルを磨く仕組みになっています。

――このシステムを導入するに至った背景・目的は何でしょうか。

デジタル営業推進部・村上勝彦部長 もともと営業活動の中で現場ではお客様の気持ちに沿った会話の訓練の一つとしてロールプレイングがあるのですが、従来は上司がお客様役をして、「この点は良かった。この点は改善すべきだ」とフィードバックしています。その部分をAIに担わせる仕組みです。

 通常であればロールプレイングは3、4人が集まらないとできませんが、日常の限られた時間の中で集まるのは大変なので、生成AIにお客様役と評価者役を演じさせることで、1人でも時間と場所を問わずにロールプレイングができます。

 営業担当の発言を受けて、AIがお客様の感情変化に沿って返答してくれます。指導者が、営業担当に教えたいお客様の属性や考え方のテンプレートをあらかじめ設定しておくことで、AIが設定通りに演じてくれるので、担当者はそれに沿ってお客様とのやり取りを練習できます。感情解析は「警戒心・興味・信頼」という3つの軸で定量化し、感情の動きで返答を返すことに加え感情が営業担当の発言によってどう動いたか、動いた理由は何なのかを可視化してくれる仕組みになっています