そもそも、本当に突出した強みがある学生なら、自己分析などしなくても周囲が放っておきません。全国大会で優勝した、起業して成功した、特許を取得した、といった客観的な実績があれば、それが強みです。「サークルの副部長として頑張りました」程度の経験を、さも特別な強みのように語るのは、誇大妄想に他なりません。

理想と現実のギャップを埋める戦略

ここまで新卒採用の「不都合な真実」を述べてきましたが、だからといって諦める必要はありません。むしろ、現実を直視することで、より効果的な戦略を立てることができます。

就職活動は理不尽なものです。能力があっても落とされることもあれば、たまたま面接官との相性が良くて受かることもあります。これを「ご縁」などという美しい言葉で片付ける人もいますが、要は運の要素が大きいということです。

だからこそ、変に気負う必要はありません。「一生を決める」などと大げさに考えず、「最初の就職先」程度に捉えておけばいい。実際、新卒で入った会社に定年まで勤める人は、もはや少数派です。転職が当たり前の時代に、最初の会社選びに神経質になりすぎるのは時代錯誤とも言えます。

最後に一つだけ。就職活動で全滅しても、人生が終わるわけではありません。既卒での就職、起業、フリーランス、海外就職など、道はいくらでもあります。新卒採用という日本独特のシステムに振り回されすぎず、もっと広い視野で自分のキャリアを考えてください。それこそが、乗り切る最良の心構えかもしれません。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

22冊目の本を出版しました。

「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)