カール・フォン・クラウゼビッツ著『戦争論』
ドイツの天才戦略研究家カール・フォン・クラウゼビッツ著『戦争論』(1832年~1834年刊)は、「戦争は他の手段による政治の継続である」(『全訳 戦争論』加藤秀治郎訳日本経済新聞出版60頁)で有名な不朽の名著とされている。
戦争は政治の一手段であり、侵略戦争であれ、自衛戦争であれ、戦争はすべて国家の政治目的(国益)実現のために行われるということである。このように、戦争は無目的な殺戮ではなく、政治目的をもって行われるから、犯罪行為ではない。また、ここから軍事に対する政治の優位すなわち「文民統制」(シビリアンコントロール)が根拠づけられる。
クラウゼビッツ著『戦争論』は戦争の本質、戦争の理論、戦略、戦闘、戦闘力、防御、攻撃、作戦計画等、戦争のあらゆる面をきわめて詳細に論じており、現代にも通用する古典とされ、防衛省防衛研究所、防衛大学校、自衛隊幹部学校をはじめ欧米・日本など世界各国で読まれている。
『戦争論』の重要な教訓
クラウゼビッツによれば、「戦争とは相手に自らの意志を強要するための実力行使であり、そのためには敵の抵抗力を無力にしなければならない」(『戦争論」39頁)。「敵の抵抗力は戦闘力、国土、敵の意志からなる。戦闘力が撃破され、国土が占領されても、敵の意志が挫かれないと戦争の終結ではない。講和条約に調印させ、敵国民を降伏させない限り戦争の終結ではない」(『戦争論』65頁)とされる。
この観点から、ウクライナ戦争を見れば、国土の20%をロシアに占領されているが、ウクライナの戦闘力及び国民の意志は強固であり、さらに、クラウゼビッツは攻撃よりも防御が戦略上も容易であり有利と言っているから(『戦争論』245頁)、ウクライナ側には継戦能力も十分認められよう。もちろん、米国を含むNATO諸国による武器・弾薬等の軍事援助の継続が必要不可欠である。