そして、最近大手学習塾が、水俣病について「この病気が恐ろしいのは、遺伝してしまうことです」と事実とは異なる記述があったと騒がれている。このようなとんでもない誤認識に基づいた嘘を表記し、教えることは腹立たしい。
しかし、メディアは遺伝性でない病気を遺伝性と表記したことを非難していたが、私は別の視点で腹が立った。この記述では、「遺伝する病気が恐ろしい」とも解釈され、このような表現をすることの方が、重大問題だと思う。
このような発想は、まさに遺伝病差別を生んできた前時代的なカビの生えた考え方だ。私は過去30年間、遺伝性の疾患も含めていろいろな多様性を認め合い、尊厳をもって接することの重要性を訴えてきたが、どのメディアもこの学習塾の表記に潜む問題性を指摘しなかった。科学部の記者はいったい何を学んできたのであろうか。いつまでたっても、科学リテラシーが低い国だと思う。
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編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2025年6月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください