今回の発見は、その記録をおよそ2500万年以上もさかのぼることになります。
現代でもシロフクロウやシロカモメなど、一部の鳥は北極で営巣します。
しかし彼らの祖先が恐竜時代からすでにそうしていたという証拠が示されたのは、今回が初めてです。
極地で生き抜いた“原始の鳥”たちのサバイバル術
この時代の北極は現在よりも温暖だったとはいえ、冬には氷点下まで冷え込み、約4カ月間太陽が昇らない極夜が続いていました。
そんな環境で、鳥たちはどうやって子育てをしていたのでしょうか?
研究者たちは2つの可能性を挙げています。
ひとつは、ヒナが孵化した後も北極圏にとどまり極夜を乗り越えて育つ適応をしていたとする「定住型」。
もうひとつは、ある程度成長した後に南へ約2000km以上の長距離を渡る「渡り型」です。
どちらにせよ、当時の鳥たちにとっては高度な生存戦略です。
「これほど原始的と考えられていた鳥が、そんな行動をしていたとは驚きです」と、論文の筆頭著者であるローレン・ウィルソン氏は語ります。

実際、この地域で見つかっていない鳥のグループもあります。
それが「エナンティオルニス類」と呼ばれる白亜紀に広く分布していた鳥類です。
彼らは卵の孵化や成長に時間がかかり、一斉に羽毛を抜き替える習性があったと考えられています。
こうした特徴は、極寒の環境には明らかに不利だったため、彼らは北極に進出できなかった可能性が高いのです。
一方で、今回見つかった鳥たちは、成長スピードが早く、羽毛の保持にも優れていたとされ、現生鳥類のような生態を備えていたと考えられます。
これにより、夏の24時間太陽が沈まない「白夜」期間に爆発的に増える昆虫をエサにし、短期間で繁殖と成長を完了するという北極特有のライフサイクルを築いていた可能性があります。
もちろん、彼らの脅威は寒さだけではありませんでした。