しかし、「人間で本当に同じ効果があるのか?」「このセンサーに異常がある人もいるのでは?」という疑問は残っていました。
今回、モナシュ大学の研究者たちは、イギリスのUKバイオバンクに登録された約40万人分のゲノムデータと医療記録を解析するという、かつてない規模の調査を実施。
研究チームは、GPCR遺伝子に関する希少で病的な変異に着目しました。
これらの変異があることで、SCFAによる信号伝達が正常に行われないと仮定したのです。
参加者は、高血圧や心疾患(急性冠症候群、心不全、脳卒中)といった診断データをもとにグループ分けされ、GPCRの病t機変移を持つ人と持たない人の疾患リスクを、年齢や性別、BMI、生活習慣を考慮に入れた統計モデルで比較しました。
さらに、食物繊維の摂取量が記録されている16万人以上のサブグループでは、「十分な食物繊維を摂取しているかどうか」という条件も加味した分析が行われました。
食物繊維の効果は”遺伝子”しだい?
その結果、研究チームは驚きの事実を明らかにします。
Gタンパク質共役受容体(GPCR)にまれな病的変異を持つわずか1%未満の人々では、短鎖脂肪酸(SCFA)をどれだけ生産してもその信号が届かず、高血圧や心不全、脳卒中のリスクが最大20%増加していたことが確認されました。

そして、食物繊維を適正量摂取していたグループでも、GPCRに異常がある人は心血管疾患の発症率が高いままでした。
これはつまり、「食物繊維を食べても、SCFAを受け取るセンサーが壊れていたら意味がなくなってしまう」ということです。
逆に、GPCRに異常のない99%以上の人では、食物繊維を十分に摂ることで、SCFAの作用によって心血管疾患のリスクを下げることができていると言えます。