実例を挙げると、ある大手総合商社では説明会予約システムで特定大学以外は「満席」と表示される仕組みが存在し、大手メガバンクではMARCH以上の学生のみにリクルーター面談の機会が与えられている。

また、学歴不問を謳う大手メーカーでも、内定者の9割が旧帝大・早慶出身者で占められているケースもある。この「建前と本音」のギャップが、多くの学生に無駄な努力と失望を強いている現実がある。

日本独特の新卒一括採用システムは、他国と比較すると特異な存在だ。アメリカでは通年採用が基本であり、インターンからの採用が主流となっている。ドイツではデュアルシステムと呼ばれる職業訓練と学業の並行制度があり、企業での実習経験を経て採用される。一方、韓国ではスペック重視の傾向が日本以上に顕著で、TOEIC、資格、学歴が重要視される。

多様化する選考方法の実態と問題点

学生への現実的なアドバイスとしては、まず「全員が大手企業に就職できる」という幻想を捨てることが重要だ。中小企業やベンチャー企業も含めた幅広い企業研究を行い、プログラミングや語学などスキル習得への投資を怠らず、就活という「ゲームのルール」を理解した上で戦略を立案することが求められる。

就職活動は、理想と現実、建前と本音が交錯する場だ。企業は優秀な人材を求めながら効率性を追求し、学生は自己実現を求めながら安定を望む。この矛盾を完全に解消することは困難だが、少なくとも現実を直視し、より透明性の高いシステムを構築することは可能なはずだ。

就活という人生の重要な岐路において、より多くの若者が自身の能力を正当に評価され、適切な場所で活躍できる社会の実現を期待したい。そのためには、企業、大学、学生、そして社会全体が一体となって、現行システムの問題点を認識し、建設的な対話を重ねていく必要がある。理想論に終わらせず、具体的な行動に移すことが、今こそ求められているのである。