それと人には向き不向きがあります。緻密な仕事に向いている人、粘り強くやるのが向いている人、人と人をつなげるのが得意な性格、大所高所から見る人、責任ある業務は最小限にしたいと思う人…このような様々な人々の混成社会においてこの業務は将来無くなるので1年後に別の会社で能力を発揮するためにスキルを身に着けてください、と言われもそれは無理難題というものでしょう。

AIはやっぱり仕事を奪うのか、という質問に私はYESの確率が高まってきたと思っています。AIは誰にとって有利なものか、といえば経営者なのです。では一般従業員はどうなのでしょうか?多くの方は自分の作業が楽になったと思っています。「以前は3時間かかった業務が30分で終わるぞ」と。しかし、それは最終的にあなたの業務の必要性が減ってきているとも言えるのです。単純に1/6の時間で達成できるなら部内の職員も1/6で済むのです。

かつて大企業の経理部には10人とか20人とかいて手書きの伝票の処理で四苦八苦したものです。今や電子化が進み、数人いればよく、その数人も経理処理をするというより、処理された数字を分析したり別の形で表現したりする「経理加工業」をしているだけです。私は7社の経理を見ていますが、うち4社は私が直接伝票処理をします。起票数だけで年間千行を優に超える会社が3つあるのに何の苦も無く全部こなせるのはテクノロジーのおかげであり、とりもなおさず、人材が必要ないのです。これは経営者にとってはありがたいですが、一般従業員のハードルがより高まったとも言えます。

カナダに来るワーキングホリディの若者。昔は英語が多少下手でも雇ってくれたところはあります。しかし、今やローカルの人も仕事の選択肢が少なく、「大学は出たけれど…」という問題が現実に起きているのです。中国の話ではありません。アメリカやカナダ、たぶん欧州も未経験者には尋常ではないぐらい職が不足しているのです。するとワーホリの若者は未経験の上に英語が十分ではないのでありつける職は皿洗いになるのです。日本で立派な仕事をしてきた方々に面接の際「あなた、カナダに皿洗いに来たのですか?皿は英語を喋らないですよ」ということもしばしばです。スキルがなければ世の中で活躍できるチャンスは本当に狭まってきています。