AIが仕事を奪うのかという話はだいぶ前に何度か話題を振ったことがあります。あれからAIが我々の日常生活により浸透してきたこともあるので、久々に本件についてもう一度考えてみたいと思います。

metamorworks/iStock
少し前にマイクロソフト社がエンジニア6000人を解雇すると発表しました。理由はプログラミングは人ではなく、AI君が担うから、であります。AI君は休まずに文句も言わず、そしてスーパー能力でたちまち仕事を完了してしまいます。AIの作業効率と人間が書くプログラムのコードの作成スピードと比べること自体が無意味な程になったということなのでしょう。以前、この話題を振った際には「AI時代に生き残るのはAIを使う人だ」とされました。ところが驚くことにAIを使う人になるはずのプログラマーが振り落とされたのです。
AI時代到来に於いて人間は職を失うのか、という議論に対して楽観論者はかつて何度か起きた産業革命の際には業務が再編されただけで相対的に職が減ったわけではない、よってAI時代がやってきても乗り越えられるだろう、という意見がありました。
私はそれについて楽観していません。かつての産業革命の時代は社会がまだ単純だったのです。そもそも産業革命の基本はエネルギー資源の変化がもたらしたものであり、世の中の構造は間接的変化であり、人の働き方も激変を伴う訳ではなかったであろうと推測しています。
ところが現代は仕事そのものが細分化され、各自が持つ能力はある特定の業種の特定の企業の特定の業務であり、その企業のやり方に応じた特定の流れやルールに沿って仕事をしています。人はロボットではない、とされますが、私から見れば同じ業務を毎日毎日繰り返し、熟練になればなるほど達観すると同時に転用が利きにくくなる弱点があるとも言えます。
雇用のミスマッチという言葉があります。これは雇用者と被雇用者の関係がうまくいかないことや人的需要と供給が合わないことを指すわけですが、人は世の中の変化にどこまで順応か、といえばそんなに簡単に変われるものじゃないと私は思っています。かつてウィンドウズ95が出て会社のおじさま方がキーボードなるものを見て「俺もこれを使うのか?」とおののきながらも人差し指で一つひとつキーボードを押しながらも時代の変化に一生懸命ついて行ったと思います。でも今の時代の変化は加速度がついており、一般人では到底ついていけないレベルにまで発展してしまったのです。