人類史上最悪のパンデミックとして知られる黒死病(ペスト)。ヨーロッパ、西アジア、アフリカの人口の最大で半数を死に至らしめ、数千万人の命を奪ったこの恐るべき病が、なぜこれほど長きにわたり猛威を振るい続けたのか?その謎が、ついに科学の力で解き明かされようとしている。
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たった一つの遺伝子が鍵だった! ペスト菌進化の秘密
カナダのマクマスター大学とフランスのパスツール研究所の研究チームが、驚くべき事実を突き止めた。黒死病を引き起こす細菌であるペスト菌の、たった一つの遺伝子の進化が、この病の長期的な流行を可能にしていたというのだ。
この研究は、パンデミックがどのようにして人間の集団に入り込み、甚大な被害をもたらし、そして異なるレベルの病原性(毒性の強さ)へと進化していくのか、という重要な問いに答えるものだ。共同研究責任者であるヘンドリック・ポイナー教授は、「これは、現在も存在する古代の病原体の変化を直接調査し、パンデミックの病原性、持続性、あるいは最終的な消滅を促進する要因を理解しようとする、最初の研究の一つだ」と語る。そして、この発見は将来、新たなパンデミックを未然に防ぐのに役立つかもしれないという。