米国商標希釈化防止法は、有名な商標について、他人が様々な商品やサービスに使用することにより、その商標としての機能が弱められないよう保護している。日本でも不正競争防止法で保護している。こうした原則を著作権法にも取り入れる提案である。

著作権局は、「著作権の目的を踏まえて各要素を総合的に判断するのは裁判所の役割であり、機械的な計算式は存在しない」と明言している。また、「生成AIは利用態様も影響も多様であるため、訴訟の結果を予断することはできない」とも述べている。著作権局は、「一部の利用はフェアユースに該当するが、他は該当しないだろう」と見ている。

AI訓練のためのライセンス

報告書「第5章:AI訓練のためのライセンス」を筆者なりに要約する。

著作権局は、生成AIモデルが引き起こす著作権問題への対策として、AI訓練のためのライセンスの概要を述べる。著作権局は「少なくとも特定の状況では、自主的ライセンスは実行可能である」としつつも、それを「すべてのAI訓練ニーズに拡張するには課題がある」と指摘する。

一方で、特定の場合に、事前に権限ある機関又は著作権団体に申請し、当該機関・団体が許諾を与えることで、著作物を利用することができる「強制ライセンス制度のAI訓練への導入は重大なデメリットがある」とし、「時期尚早な導入は、柔軟かつ創造的な市場解決策の発展を妨げる恐れがある」と警告する。

また、「現在のライセンス市場は、フェアユースを巡る法的不確実性や、企業ごとのAIの利用法・ライセンス戦略の違いによって歪められている可能性がある」としつつ、「裁判所によって係争中の訴訟が解決され始めれば、より明確な法的基盤のもとで、技術的および市場ベースのライセンス解決策が進展する可能性がある」と述べている。

報告書「第6章 結論」については解説もあるので、別稿で紹介する。