米最高裁は1994年のプリティ・ウーマン事件判決でパロディにフェアユースを認めた。判決は第1要素について、「この要素の検討は、新しい作品が原作品の目的に取って代わるのか、または新しい表現や意味を伴って変化させることで新たな目的や性格を持つのかに焦点を当てている。新しい作品がどれほど変容的であるかを問うことで、変容的であればフェアユースの認定が不利になる可能性がある商業性などの他の要素の重要性は相対的に小さくなる」として、この要素をフェアユース有利と判定した。
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2025/06/04
米著作権局「AI訓練とフェアユース」報告書を出版前に発表
ビデオテープレコーダー(VTR)「ベータマックス」を売り出した米国ソニーが、著作権侵害で訴えられた1984年の米ソニー事件判決では営利目的か否かが重視された。プリティ・ウーマン事件判決ではそれを修正し、変容性が重視された。営利目的であっても別の作品になっていれば侵害を認めないという判決で、その後の判例の流れを変える画期的な判決となり、イノベーション関連事件にも広く適用された(詳細は拙著『国破れて著作権法あり~誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか』第5章「オラクルの1兆円の損害よりも社会全体の利益を優先させた米最高裁」みらいパブリッシング 参照)。
ちなみに日本では、1980年のパロディモンタージュ写真事件で、最高裁が旧著作権法30条の引用にあたらないとしてパロディを認めなかった。それ以来、パロディはいまだに合法化されていない。
報告書は第1要素について「また、開発中の具体的な複製行為を特定することは重要だが、データセットの編成や訓練それ自体が最終目的であることは稀である。フェアユースの評価は、利用全体の文脈の中で行うべきである」と続ける。
第2要素(著作物の性質)報告書は、「ある著作物は、著作権の核心により近い」と指摘。「小説、映画、美術、音楽などの創造的・表現的な著作物の利用は、コンピュータコードのような事実的・機能的な著作物の利用よりもフェアユースに該当しにくい」とする。生成AIモデルは「表現的かつ機能的な著作物、公開済みまたは未公開の著作物を定期的に訓練に使用している」ため、フェアユースの判断は「モデルや対象著作物によって異なる」とする。
第3要素(利用部分の量と重要性)関連タグ