所得の平均値と各種税金、健康保険、年金拠出などを比較した「純賃金が高い国ランキング」で、日本は8位になった。米英とともにトップ10入りを果たしているが、アジア圏の首位は韓国だ。トップ3はスイス、ルクセンブルク、アイスランドと、生活水準の高い国が占めた。
ランキングは米金融情報サイト「ハウマッチ・ネット」 が、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国のデータ(2017年)を参照に作成した。
純賃金の高い10カ国と純賃金
10位 米国 3.9万ドル
9位 ノルウェー 4.1万ドル
8位 日本 4.1万ドル
7位 英国 4.2万ドル
6位 オーストラリア 4.2万ドル
5位 オランダ 4.4万ドル
4位 韓国 4.5万ドル
3位 アイスランド 4.5万ドル
2位 ルクセンブルク 4.7万ドル
1位 スイス 5.9万ドル
平均所得は日米英と同水準だが、税率が非常に低い韓国
賃金が高い国でも税金が高ければ、手元に残るお金は少なくなる。生活する者にとっては、高賃金+低税率というシステムが確立した国が理想的だろう。
スイスはこの黄金の方程式に当てはまる。OECDによると、平均年間賃金収入は7万ドルと35カ国中最も高く、所得税は10.7%、社会保障負担は6.2%と非常に低い。ルクセンブルク、アイスランド、ドイツは税率の合計(所得税+社会保障負担)がそれぞれ29.1%、28.7%、39.9%と高めだが、年間所得平均も6万ドルを超えている。
※国税庁のデータによると、日本人の平成28年分平均給与は421.6万円。
OECDによると日本の平均年間賃金収入は5.3万ドル、英国は5.4万ドル、米国は5.3万ドル。税率もそれぞれ22.3%、23.4%、26.0%と似たような水準だ。韓国の平均の年間賃金収入では5.3万ドルと大差ないが、税率は14.5%と7%のチリ、11.2%のメキシコに次いで低い。そのためアジア圏では純賃金がNo.1 だ。
トップ10入りした国はいずれも、3.2万ドルというOCED加盟国の純賃金平均を上回っている。
米国、税金への不満は年々減少?
ベルギーの税金と所得の比率には驚かされる。所得平均は5.9万ドルだが、所得税26.5%、社会保障負担14.0%が差し引かれるため、手取りは3.5万ドルにも満たない。
またチリやメキシコのように税金が低くても、所得が非常に低い国もある。チリの平均の年間賃金収入は2.3万ドル、メキシコは1.3万ドルしかない。
こうした数字はあくまで平均値を基準にしたもので、各国で所得によって税率は変わる。例えば日本では高所得層ほど所得税の負担が大きくなる累進課税形式を採用しており、現在(2018年6月17日)の最高所得税率は45%。給与所得控除や基礎控除を見直し、フリーランサーなど個人事業主を減税する税制改革も実施された。
子持ちの非共働き家庭が最も優遇される?
税率は独身か所帯持ちかにも左右される。国によって税率は異なるが、一般的に賃金税 (所得だけではなく事業や不動産などによる所得にもかかる税金)が最も低いのは、控除や補助金で優遇される子持ち世帯だ。
OECD加盟国の賃金税平均は、2人の子どもがいる非共働き家庭の場合26.1% だが、独身者の平均は35.9%である。日本は独身者が32.6%と平均より低いが、2人の子どもがいる非共働き家庭は27.4%と平 均より若干高い。米国はそれぞれ31.7%、20.8%だ。
その差は ルクセンブルクとポーランドでは20%以上、ベルギーやドイツ、カナダなど7カ国では15%開く。しかし韓国やギリシャではわずか3%以下、チリやメキシコでは変わらない。
税制改革でニューヨークとカリフォルニア から80万人が移動?
国民はこうした現状をどのように受けとめているのだろう。2018年4月、世論調査会社ギャロップ が実施した調査では、1015人の米成人のうち48%が「税金が高過ぎる」と不満に感じていることが分かった。しかし69%を記録した1968年をピークに、不満を抱える国民は減少傾向にある。
米国では2018年に入り、トランプ政権による大規模な税制改革が実施されている。個人の所得税の最高税率が39.6%から37%に引き下げられたほか、標準控除枠が以前のおよそ2倍に拡大されるなど利点を前面に打ち出しているが、「最大の恩恵を受けるのは高所得層」との非難も上がっている。
しかし保守党のエコノミスト、アーサー・ラッファー氏とスティーブン・ムーア氏は、新たな税制法案により、今後3年にわたり約80万人が税金の高いカリフォルニアとニューヨークから、税金の低い地域へと移動すると予想している。
州・地方税(財産税、所得税または売上税)の控除額上限が 1 万ドルに制限されるため、高所得層が納める税金も高くなるというのが根拠だ。両氏の予想では、カリフォルニアの高所得層の税率は現在の8.5%から13.0%に跳ね上がるという。ニューヨークの1000万ドル以上の高所得者は、税率が50%以上に引き上げられる可能性もあると、保守党のアナリストは見ている (CNBC2018年4月24日付記事 )。
文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online
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