さらに尾の全体を横に振った場合、最大で約174キロジュール(kJ)もの運動エネルギーが発生することが示されたのです。

これまでの研究で、現役のプロボクサーのパンチがだいたい1キロジュールとされているので、プラテオサウルスの一撃はプロボクサーのパンチ174発分の威力に達すると考えられます。

これは肉体に直撃すれば、小型の恐竜などであれば即死レベルですし、大型の捕食者に対して十分な防御になると見られます。

敵だけでなく、仲間内でも使われていた可能性

プラテオサウルスはトリケラトプスやアンキロサウルスとは違い、皮膚の装甲や角といった防御装置を持たない恐竜でした。

そのため、「どうやって身を守っていたのか」は長年の謎とされてきました。

今回の研究では、プラテオサウルスの尾に含まれる43個の椎骨の構造を詳細に分析。

後半部分の骨は次第に小さく、細長くなっており、柔軟なムチのような動きが可能だったことが明らかになりました。

また、尾の質量や可動域、そして現代のトカゲの動きをもとにしたシミュレーションにより、「鞭打ち」のような攻撃行動が現実的なものであったと推定されました。

そして興味深いのは、この尾の使用目的が単なる「捕食者よけ」だけにとどまらなかった可能性があることです。

現生のオオトカゲやイグアナのように、尾打ちは縄張り争いや繁殖相手をめぐる闘争、さらには子どもを守る行動にも使われます。

実際、研究ではプラテオサウルスが「群れで暮らしていた」可能性も指摘されており、個体間でのコミュニケーションや争いの中でも尾が使われていたのではと考えられています。

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プラテオサウルスの復元イメージ/ Credit: Thomas Filek et al., Royal Society Open Science(2025)

また、同時代に生息していた肉食恐竜リリエンステルヌスなどは体長5メートル程度で、プラテオサウルスより小柄でした。