このシステムは、既存のFDM(熱溶解積層)方式プリンタを改良したもので、最大の特徴は「逆さ印刷」を採用していることです。

通常の3Dプリンタは下から上に積層していきますが、フレックス・プリンタでは部品を上から吊るすように形成します。

この方式により、柔らかい素材が垂れたり潰れたりすることなく、非常に薄くて繊細な構造も正確に印刷できるというわけです。

そして、このプリンタシステムにより、なんと「1つの素材・1つの工程」で、骨格、筋肉、配線、回路に相当する機構まですべてを一体成形することに成功したのです。

ロボット本体の材料は、柔軟なTPUフィラメント1種のみで構成されており、追加部品や接着工程は不要です。

では、生まれたばかりのロボットが歩き出す姿を見てみましょう。

3Dプリントされてすぐに歩き出すロボット!その仕組みとは?

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3Dプリント後、すぐに歩き出せるロボットを開発 / Credit:Maks Gepner(The University of Edinburgh)et al., Device(2025)

動画のように、新しく誕生したロボットは、チューブを繋ぐだけですぐに歩き出すことが可能です。

では、このロボットは、なぜ印刷された直後に歩けるのでしょうか?

その秘密は、内部に組み込まれた「流体素子(fluidic logic)」という仕組みにあります。

流体素子とは、気体や液体といった流体を利用して、電気回路のスイッチングのような動作を実現する部品です。

安定した空気の流れに、ごくわずかな制御流を加えるだけで、流れの方向や経路が劇的に変化するという性質を活かしています。

そのため、バルブのような機械的な動作部品を使うことなく、空気の流れだけで信号の切り替えや制御が行えるのです。

この仕組みによって、空気圧を“信号”として使い、ロボットの各部位に順番に命令を送ることができます。

まさに「空気で構成された論理回路」と言えるでしょう。