研究チームが集めたデータは、太平洋・大西洋・インド洋に点在する75地点・195件の出現記録

生息深度は3,890メートルから8,931メートルに及び、アビサル帯からハダル帯までの深海全域に広く分布していることが明らかになりました。

さらに、得られた標本からはミトコンドリアDNAと核DNAの配列が解析され、世界中の個体がほとんど同じ遺伝型を持つことが判明したのです。

このことから研究者らは「アリセラ・ギガンティアは地球規模でほぼ同一種として存在している」と説明。

そしてこれらのデータから生息範囲を地図上で計算すると、なんと地球の深海底の約59.45%に達することが示されたのです。

つまり、私たちがこれまで「ほぼ見ることができない」と思っていたダイダラボッチは、実はとても普通に、深海のあちこちに存在していると見られています。

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撮影されたダイダラボッチの群れ/ Credit: Paige J. Maroni et al., Royal Society Open Science(2025)

また、解析の結果、アリセラ・ギガンティアには大きな天敵が存在しない可能性も示唆されました。

そのため、警戒色の赤を帯びる必要がなく、体色に色素をほとんど持たない特徴を示していると見られます。

これがまた調査時の「見つかりにくさ」につながっていたのかもしれません。

さらに近年の深海探査の進展によって、浅い海では確認されていなかった「密集した群れ」が深海平原で撮影されるようにもなっています。

「少ないと思っていたのは、ただ正確な場所にアクセスできていなかっただけ」であり、研究者たちは、観察バイアスという人間の手による調査の限界をデータで浮き彫りにしました。

この発見は、深海に生きる多くの生物に対する私たちの認識を覆すものです。

なかなか見つからないからといって「稀少」や「絶滅危惧」と判断するのは、科学的観察としてはまだまだ不十分なのかもしれません。