深海探査の際、運がよければ稀に見つかる巨大な甲殻類「アリセラ・ギガンティア(Alicella gigantea)」。
なんと体長30センチを超えるこの深海生物はヨコエビ類(端脚類)のなかで世界最大種とされており、和名では日本に伝わる巨人にちなんで「ダイダラボッチ」と呼ばれています。
ダイダラボッチはこれまでの調査で稀少な生物と考えられていましたが、豪ウェスタン・オーストラリア大学(UWA)の研究で、実は世界の深海底の60%に分布している可能性が浮上したのです。
伝説ポケモンくらい珍しいと思っていたら、わりと普通にいるモンスターだったのかもしれません。
研究の詳細は2025年5月21日付で科学雑誌『Royal Society Open Science』に掲載されています。
目次
- 幻とされた巨大ヨコエビ
- 深海の巨人はレアじゃなかった?
幻とされた巨大ヨコエビ
アリセラ・ギガンティアは、体長30センチを超えることもある世界最大級の端脚類(ヨコエビの仲間)です。
他の端脚類のほとんどが、ほんの指先くらいの大きさしかないことを考えると、異常なサイズであることがわかります。

この種は、1899年に初めて記載されて以来、記録や標本が極めて限られていたことから、「非常に希少な生物」とされてきました。
特に1970年代以降、その姿がカメラに映ったのはごくわずか。
2000年代に入ってからも、南太平洋のケルマデック海溝などでごく少数が確認されただけで、ほとんどの深海探査では出会うことがありませんでした。
そのため、研究者の間でも「個体数が少ないのでは」「絶滅寸前かもしれない」との見方が広がっていたのです。
しかし問題は“数が少ない”ことではなく、“探している場所が偏っていた”ことにあったのかもしれません。
研究チームは今回、過去の記録を徹底的に調査し、さらに独自に深海探査を行うことで、驚くべき事実にたどり着きました。