●この記事のポイント ・出前館、6期連続の最終赤字となっていたが、25年8月期には黒字転換の見通しに ・1オーダーあたりの売上高・変動費・限界利益の管理に注力しており、売上高・変動費ともに改善 ・広告宣伝費や業務委託費などにおいて適正化を進め、固定費を大幅に削減

「Uber Eats(ウーバーイーツ)」と並ぶフードデリバリーサービス大手の「出前館」。2024年8月期(通期)まで6期連続の最終赤字となっていたが、25年8月期には黒字転換の見通しとなった。フードデリバリーサービス市場はこの大手2社に加えて「menu(メニュー)」「Wolt(ウォルト)」なども存在感が増しつつあり、シェア争いが激化しているが、なぜここにきて出前館は7期ぶりの黒字決算を達成する見込みとなっているのか。出前館に取材した。

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 フードデリバリーサービスが大きく普及するエンジン役となったウーバーイーツが国内でサービスを開始したのは2016年。出前館がサービスを開始したのは2000年。Web行動ログ分析ツール「Dockpit」を手掛けるマーケティング調査企業・ヴァリューズが運営するサイト「マナミナ」記事(2024年7月3日付)によると、23年6月~24年5月の1年間の各アプリのユーザー数は、出前館が約1660万、Uber Eatsが約1550万、menuが524万、Woltが375万となっている。

 各社はシェア向上のため独自の戦略を展開している。ウーバーイーツは3月、現在一部店舗に限定していた買い物代行サービスを全国で展開すると発表。menuはアプリのユーザビリティに優れているとされ、デリバリーとテイクアウトの両方に対応しているのが特徴。Woltは競合サービスの進出が遅れている地方都市でユーザーと店舗の獲得に注力している。

ユニットエコノミクスの向上と固定費の適正化

 そんななか、出前館は積極的なテレビCMの放映で認知度向上に注力していたが、業績的には赤字が続いていた。その同社がついに黒字に転換する見通しとなった。2024年9月~25年2月期の連結最終損益は13億4400万円の赤字と、前年同期の42億円の赤字から大幅に改善した。要因について出前館は次のように説明する。

「ユニットエコノミクスの向上と固定費の適正化によるものです。ユニットエコノミクスについては、従前より1オーダーあたりの売上高・変動費・限界利益の管理に注力しており、売上高・変動費ともに改善しております。固定費については、広告宣伝費や業務委託費などにおいて、適正化を進め、大幅な削減に成功しております」   

 売上の面では、加盟店セレクションの拡大により注文単価が上昇し、オーダーポートフォリオの変化によりテイクレートが向上。さらに広告売上高が増加した。変動費の面では配達原価の適正化が進み、クーポンROIも向上。これらにより、24年度第4四半期の限界利益率が31%と、22年度同期の2%から29ポイントの改善となった。