さらに研究では、夜間に月光が届く層も浅くなっている可能性が示唆され、夜行性の生物にとっても深刻な影響が出るかもしれないといいます。
光が届く海の層が縮むことは、生き物にとって「住める場所」が小さくなることを意味します。
フォトゾーンが浅くなると、そこで光を頼りに生きるプランクトンや魚などの生物はより表層近くに集まらざるを得なくなります。
「もし広大な海域でフォトゾーンが約50メートルも縮小したら、光を必要とする生物たちは表層へ押しやられ、餌や生息場所をめぐって互いに競争しなければならなくなるでしょう。それは海洋生態系全体に根本的な変化をもたらす可能性があります」と、プリマス海洋研究所のティム・スマイス教授(Tim Smyth)は警告しています。
研究チームはこの暗化現象を「海洋版の森林伐採」と呼ぶこともあり、「地球上でも最大級の生息域喪失の一つ」に相当すると表現し、今後さらに詳しく調査する必要があると述べています。
さらに、このフォトゾーンの変化は海の生物だけでなく私たち人間にも無関係ではありません。
「私たち人間も、呼吸する空気や食べ物となる魚、気候の調節といったあらゆる面で海のフォトゾーンに頼っています。そう考えると、今回の発見が示す状況は本当に懸念すべき事態だと言えます」と、本研究を主導したプリマス大学のトーマス・デイビス准教授(Associate Professor)はコメントしています。
現時点で海の暗化が具体的にどのような影響を及ぼすかは完全には解明されていませんが、その影響は「深刻なものになる可能性が高い」と研究者らは指摘しています。
今後は、要因のさらなる特定や地域ごとの詳細なデータ収集を通じて、10年・20年という長期スパンで暗化の進行度合いを把握し、対策を講じる必要があるでしょう。
静かに進行する海の暗化は、地球規模で起きている重大な環境変化として捉えられており、生態系への影響を引き続き研究するとともに、その動向を注視していくことが求められます。