論文の図1 B(IHO 海域別ランキングの棒グラフ)では、日本にかかる主要 3 海域(日本海、オホーツク海、太平洋の北西の沖合)はいずれも上位 4 分の1 以内に入っており、特に 日本海が4位という突出した値を示しています。図1 A で北海道以北や日本海側が濃い赤で塗られているビジュアルを数量面で裏づけています。特に日本海は、面積の約半分(46~48%)が暗化判定を受けたという点で、地中海やカリフォルニア沖と並ぶ“暗化ホットスポット”と研究チームが位置づけています。

ただし、海が暗くなる一方で明るさが増した海域も存在します。

研究によれば、同じ20年の間に全球の約1割ではフォトゾーンが深くなり水中の光環境が改善していました。

地域によって変化の方向は様々で、例えばイギリス周辺では北海の一部が暗くなった一方、イングランド南岸の海峡やスコットランド北方の海域では明るくなったところも報告されています。

このように地域ごとの差異はあるものの、全体としては「海が暗くなる」という大きな世界的傾向が浮かび上がったと研究チームは結論づけました。

生態系・漁業・気候――連鎖する暗黒ドミノ

生態系・漁業・気候――連鎖する暗黒ドミノ
生態系・漁業・気候――連鎖する暗黒ドミノ / Credit:Canva

では、なぜ海はこのように暗くなっているのでしょうか。

研究者たちは、その原因は一つではなく複数の要因が重なっていると指摘しています。

沿岸では、人間の活動に伴う栄養塩や有機物の流入増加(農業からの肥料流出や豪雨の頻発など)により水中のプランクトンや泥などの粒子が増え、光が遮られている可能性があります。

一方、外洋では気候変動による海洋循環パターンや水温の変化がプランクトンの繁茂パターンを左右し、水の透明度低下につながっていると考えられます。

要するに、沿岸からの汚濁物質の供給増加と地球規模の気候変動という二つの潮流が相まって、世界の海で光が届きにくくなっているのです。