とはいえ、こうした変化が地球規模でどの程度進行しているのかはこれまで明らかではありませんでした。

そこで英国プリマス大学とプリマス海洋研究所の研究チームは、衛星データを駆使して約20年間にわたる全球のフォトゾーンの変化を詳しく調べ、この「海の暗化」が世界中で起きているのかを検証することにしました。

巨大サングラスをかけ始めた海

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図は、海がどこで「サングラスをかけた」のかをひと目で示す地図と、その影響を受けた海域をランキングしたグラフの2部構成になっています。上の世界地図(パネルA)では、衛星が観測した青緑色の光(490 nm)が年々どれだけ減衰したかを色で表現しており、赤い部分は水がより光を吸い込んで暗くなっている場所青い部分は逆に明るくなっている場所、白は統計的に変化のない場所を示します。北極・南極周辺や北東大西洋、北西太平洋などの広い海域が深い赤で染まっていることから、暗化が沿岸だけでなく外洋の主要海域にも及んでいる様子が直感的に分かります 。下の棒グラフ(パネルB)は国際水路機関(IHO)が区分する各海域を、面積のうち何%が暗化したかで順位付けしたもので、バーが高いほどその海域で暗化が進んでいる割合が大きいことを示しています。同じ図には、バーの上に実際に暗化した面積(1万 km²単位)が数字で載っており、たとえばボスニア湾では半分以上の海面で光が届きにくくなったことが一目で分かります。

研究チームは2003年から2022年まで約20年間にわたり、衛星による海洋観測データを解析して海の明るさの変遷を追いました。

NASAの地球観測衛星「MODIS Aqua」が提供する490nmでの光減衰係数(Kd(490))という指標に注目し、水中で光がどれだけ減衰するか(つまり水の透明度)を全球で比較したのです。

この係数は値が大きいほど水が濁って光が届きにくいことを示すため、Kd(490)の増減から各海域の「明るさ」の変化を評価できます。