国民年金は半分以上が未納・免除で最低保障の役割を果たせず、結局は生活保護と二重に受ける浪費の温床になってしまう。そこで資金の潤沢な厚生年金からピンハネして年金制度を延命しようというのが今回の法案のねらいである。

年金問題は超党派の国民会議で決めるべき

しかし今の生活保護受給者は200万人で、予算は4兆円。その程度の貧困対策のために6700万人の年金加入者を巻き込み、137兆円も予算をつぎ込むのは、膨大な無駄である。これは貧困対策を年金制度の枠組でやろうとするからで、貧困層にターゲットを絞った最低所得保障が必要だ。

超高齢社会のネズミ講では、子ネズミの負担はどんどん重くなる。厚生年金は年金として機能しているが、国民年金は「100年安心」のはずが20年で破綻してしまった。これから受給額がますます減り、貧困対策の役には立たない。それを延命する方法が厚生年金積立金の流用という脱法行為しかないのなら、もう国民年金は廃止すべきだ。

今回の年金法改正案のもう一つの柱である厚生年金の適用拡大は、国民年金の加入者を大幅に減らすものだ。厚労省も国民年金が持続不可能であることは知っているのだろう。これ以上、無理な建て増しを重ねるのはやめ、1階部分の生活保障は税に置き換える抜本改革に踏み出すべきだ。

年金や老人医療など高齢者のからむ問題は政治的なタブーになり、合理的な議論ができない。国民民主や維新などの野党は立民の暴走に歯止めをかけて明日の採決を阻止し、超高齢化社会の年金問題のあり方を超党派の国民会議で考えてはどうだろうか。