年金法改正案は審議なしで金曜に衆議院で可決、参議院でも1日で可決する予定だという。こんな乱暴な審議日程は見たことがない。最大の争点だった厚生年金積立金の流用は「附則」に書かれるだけで、2029年に再検討してやるかどうか決めるという。なぜそんな先の法案をこんなに急いで通すのか。

年金官僚が立民党を利用した強行突破

これは当初の改正案を自民党につぶされた厚労省の年金官僚が、だましやすい立民党を使ってリベンジをはかったようだ。彼らにとっては5年に1度の年金法改正が失敗しては面子がつぶれる。野党を利用してでも強行突破をはかったのだろう。テレビでも主人公は厚労族の重鎮、田村憲久氏である。

立民案の内容は厚労省の原案と同じだが、いろいろごまかしがある。彼らが出した表では、生涯の受給と負担をみると、65歳以上は厚生年金積立金を基礎年金に流用して支給額が減るが、60歳以下はその積立金で基礎年金(厚生年金の1階部分を含む)が増えるので、生涯の受給額は「底上げ」される。

フジテレビより

厚労省の原案にも「99.9%の人の受給額は増える」と書いてあるが、賦課方式の年金はゼロサム・ゲームである。みんなが得することはありえない。どこにトリックがあるのか。

厚生年金積立金を流用して税負担を先送りする「ネズミ講」

それは厚労省の資料にも書いてある「国庫負担の増65兆円」である。2029年から厚生年金の支給額をを65兆円減らして底上げし、基礎年金の半分の国費(税)を2052年から65兆円投入し、合計137兆円増やす。この税は将来世代が負担する。つまりこれは税負担を次世代に先送りする国営ネズミ講なのだ。

厚労省の資料

なぜそんなことをするのか。それは10年後から就職氷河期世代が年金受給年齢になると無年金老人が激増し、生活保護が倍増するといわれているからだ。国民年金が少ないと生活保護を受ける必要があるので、年金を底上げするという。