部下に仕事を任せられないリーダーの多くは、「教える時間がもったいない」という思考に陥っています。確かに、自分でやれば10分で終わる仕事を、部下に教えながら進めると1時間かかることもあるでしょう。しかし、これは投資と同じです。最初の1時間を惜しんでいると、永遠に自分が10分の作業を繰り返すことになります。

部下の成長には個人差があり、同じことを教えても習得スピードは人それぞれです。ある部下は3回の説明で理解できても、別の部下は10回必要かもしれません。この違いを受け入れ、根気強く向き合うことが重要です。

また、部下に任せた当初は、ミスや手戻りが発生することも覚悟しなければなりません。完璧主義のリーダーほど、部下の80%の出来に我慢できず、つい手を出してしまいます。しかし、その20%の差を埋めるプロセスこそが、部下の成長機会なのです。

育成期間中は、確かに組織全体の生産性が一時的に下がるかもしれません。しかし、3ヶ月後、半年後を見据えてください。きちんと育った部下は、あなたの右腕となり、組織の戦力となります。一人で10の仕事をこなすより、5人で50の仕事をこなせる組織の方が、はるかに強いのです。

部下育成は種まきと同じです。すぐに芽は出ませんが、水をやり続ければ必ず花が咲きます。今日の小さな投資が、明日の大きなリターンとなって返ってくることを信じて、部下に仕事を任せる勇気を持ちましょう。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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