異なる“素材”からなる量子ノード間(例えば固体の量子メモリと光子)でも、青い靴下の色を共有するかのように特定の量子状態を共有できれば、世界中を駆け巡る量子情報ネットワークが構築できるはずです。
今回の成果について、共同第一著者のアダム・ショー博士は「原子の熱運動はこれまで量子系では邪魔者扱いされてきましたが、それをむしろ強みに変えられることを示しました」と強調します。
量子の揺らぎを巧みに利用することで、誰も見たことのない新しい量子状態を引き出したのです。
その達成された超量子もつれ状態は、「より少ない資源でより多くの量子もつれを得られる」ことを示す象徴的な例ともなりました。
これは量子技術の開発において大きな福音です。
研究チームは「運動状態は量子技術にとって強力なリソースになり得る」と述べ、量子計算からシミュレーション、精密計測に至るまで幅広い応用可能性を語っています。
見方を変えれば、本研究は量子世界の操作盤に新たなレバーを増やしたとも言えるでしょう。
一つの原子から引き出せる量子パワーが飛躍的に増大すれば、量子コンピュータの性能向上やこれまで不可能だった実験の実現につながります。
わずか39本のレーザー光による巧みな原子操縦から、“双子の原子”の二重もつれという驚異的な状態が生まれました。
その光景は、量子の世界がまだまだ多くの秘密を隠し持っていることを物語っています。
日常の直感を超えた量子現象ですが、研究者たちはそれを道具として手懐け始めたのです。
青い靴下の不思議なペアが示すように、たとえ離れ離れでも深い絆で結ばれる量子の粒たち。
私たちは今、その絆を自在に操る術を手にしつつあります。
量子もつれの可能性はさらに広がり、未来の量子計算機や通信網、そして新しい物理現象の解明へと、私たちを導いてくれるに違いありません。
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元論文
Erasure cooling, control, and hyperentanglement of motion in optical tweezers
https://doi.org/10.1126/science.adn2618