こうした一連の反応は、決して無意味な「空白時間」ではありません。
むしろ、脳が休息と再調整を行っている大切な時間なのです。
退屈な時間は脳にプラスの作用となる!
現代人は日常生活をほとんど常に「オン」の状態で過ごそうとしています。
SNSやニュース、スケジュール管理、仕事、育児などなど――ありとあらゆる情報や刺激に囲まれ、ひと息つく「間(ま)」を失いつつありますし、きっちりと予定が詰まっているスケジュールこそが効率的であると考えがちです。
ところが、このような過剰刺激状態は「交感神経系」の過活動を招きます。
交感神経は「闘争か逃走か」のストレス応答をつかさどる神経で、本来は緊急時に一時的に活性化するものです。
しかしスマホ通知や締切、タスクの山に常時さらされている現代人の神経系は、過度な刺激が途切れることなく、慢性的なストレス状態=「アロスタティック・オーバーロード」に陥っている可能性があります。
この状態では、些細な刺激にも過敏になり、不安やイライラが高まりやすくなるばかりです。
そんな中で、退屈な時間は神経系を「リセット」するための自然な手段となります。
科学者たちは、適度な退屈が以下のようなポジティブな効果を持つと報告しています。
・創造性の促進:頭の中で自由に思考が巡り、アイデアが生まれやすくなる
・独立した思考の育成:外部の刺激に頼らず、自分の内側から興味を見つけられるようになる
・感情の安定化と自尊心の向上:何もない時間に自分の気持ちと向き合うことで、不安への耐性がつく
・デジタルデトックス:スマホから離れる時間が生まれ、即時報酬に依存しない習慣が育つ
・神経系の再調整:感覚的な入力が減り、不安感の鎮静につながる
つまり、退屈は「心の免疫力」を保つ鍵となるのです。
近年、世界中で不安障害やうつ症状が増加しています。
特に若年層において顕著であり、その背景には「常に刺激を求める社会」があると指摘されています。