ところが、5月12日を期限とした「30日間停戦」をロシアが拒絶した後も、なかなか約束された制裁は実施されなかった。それどころか、5月20日になってようやく「第17弾(!)」となる対ロシア制裁パッケージをEU理事会が発表した後も、アメリカの参加はなかった。

独・仏・英首脳の「コカイン騒動」まで引き起こしたリラックスした格好でのリラックスした表情での電車移動キーウ出張時の「余裕しゃくしゃく」の発言では、ロシアが「30日間停戦」を拒絶するなら、停戦交渉も行わず、ただ制裁だけを行ってロシアを叩き潰すかのような話だったにもかかわらず。

ところが、「停戦なければ交渉よりも制裁」の話は思い出されることはなく、なぜ制裁なしで停戦交渉が行われるのかは全く論評されることなく、話題は次に、「ゼレンスキー大統領がプーチン大統領のイスタンブール交渉への参加を要求! いよいよ首脳会談か」に移った。

ロシアは単に最初からこの「要求」を全く相手にしていなかっただけだったのだが、5月16日イスタンブール交渉の際には「プーチンは逃げた、臆病者だ」の大合唱が起こった。そして「ロシアの要求は絶対のめない!交渉拒絶で、戦争継続だ」の解説が見られた。

ところが実際には、今のウクライナに余裕はない。いっこうに交渉そのものを拒絶するような声明は、ウクライナ政府からは出てこなかった。そこで次に関心の対象になったのは、「次はバチカンで停戦協議か」だった。

想像たくましく膨らんだ法王調停なるものが話題になった。その根拠は、トランプ大統領が、5月19日のプーチン大統領との電話会談の後にSNSに書き込んだ「ローマ法王に代表されるバチカンも、交渉をホストするのに関心がある(The Vatican, as represented by the Pope, has stated that it would be very interested in hosting the negotiations.)と述べた」という一文だけだった。